桜島フェリー7月から運賃値上げ、大人50円、普通車400円増 利用減少で15年度から赤字続き 経営健全化団体への転落回避へ「苦渋の選択」 鹿児島市

鹿児島港に入る桜島フェリー=鹿児島市本港新町

 鹿児島市は7月から、桜島フェリーの運賃を値上げする。利用減少で赤字が続き、資金不足により経営健全化団体に転落する恐れがあることが大きな理由で、市船舶局は「生活、防災の航路を維持するための苦渋の選択」と理解を求めている。一方で、桜島地区の住民らの間では「人口減少が加速するのでは」といった不安や不満の声が今も残っている。

 新運賃は旅客が大人250円(50円増)、小児130円(30円増)。車両が軽自動車(3~4メートル未満)が1700円(300円増)、普通自動車(4~5メートル未満)は2350円(400円増)など。

 旅客運賃には、65歳以上を対象にシニア定期(1カ月5250円)を新設。回数券は旅客、車両とも値上がりするものの、割引率は現行よりも手厚くなるという。

 市船舶局によると、2014年度の東九州自動車道の鹿屋延伸、15年度の桜島噴火警戒レベル4への引き上げなどを背景に旅客、車両とも利用が減少。18年度は一時的に持ち直し、19年度以降は新型コロナウイルス禍で再び大きく落ち込んだ。

 20年度の輸送量は旅客191万8000人、車両91万3000台。13年度(旅客367万6000人、車両152万7000台)と比べ、6割以下まで減った。最近は回復傾向だが、コロナ禍前の水準には戻っていない。

 こうした状況を受け、フェリー事業の経常収支は15年度以降、赤字が続いている。15~19年度は2億円台、20、21年度は7億円台にまで膨らんだ。23年度は3億円近くになる見込み。近年の燃料費高騰も経営を圧迫している。

 市船舶局の試算では、現行運賃のまま営業を続けた場合、25年度末に資金残高はマイナス5億4300万円、資金不足比率27.3%となる。同比率が20%を超えると、公営企業は「経営健全化団体」になる。そうなれば、国から抜本的な改善計画を求められ、現行の便数や隻数、サービスを維持できなくなる可能性があるという。

 桜島フェリーは19年度に値上げを実施した。23年度は5隻から4隻に減らし、主な運航間隔を15分から20分に拡大して減便するなど、赤字対策に取り組んできた。

 値上げ後も経営を取り巻く環境は依然厳しいが、慢性的な資金不足は回避できると予測している。市船舶局の渡辺真一郎次長は「フェリーは生活航路であるとともに、災害時の救難船舶としての位置付けもある。事業継続のため、値上げに理解をいただきたい」としている。

鹿児島市の位置を地図で確認する

© 株式会社南日本新聞社