6月17日「おまわりさんの日」 島の往来、家族と見つめて 長崎・高島を守る唯一の警察官

船を見送る中道巡査部長(左)と小鉄ちゃん(中央)、有希子さん=長崎市高島町

 かつて炭鉱の島で知られた長崎市高島町。人口約250人の島を守る唯一の警察官、中道良輔巡査部長(38)の1日は忙しい。小中学生の登校見守り、高齢者宅などの巡回、島内パトロール-。港を往来する船の動きを見つめる午後3時、妻有希子さん(39)と長男小鉄ちゃん(1)もそばに並び、船を見送るのが日課だ。“三人四脚”の姿が住民らとの距離を縮め、赴任から約3カ月、すっかり島に溶け込んでいる。17日は「おまわりさんの日」-。

 高島は長崎港から定期航路で約35分。188世帯、263人(4月末現在)が暮らす。隣の「端島(軍艦島)」が世界文化遺産となり、高島でも観光客の姿が見慣れた光景になった。
 諫早市出身。2007年4月に警察官を拝命。この春、大浦署高島駐在所に赴任した。駐在所勤務は新上五島署奈摩、川棚署長野に続き3度目。高島を含む二次離島にある1人勤務の駐在所は、県内に4カ所のみ。事件や事故などがあれば、昼夜を問わず、応援が来るまで1人で対応する。
 駐在所の朝は早い。午前7時15分、市立高島小中学校の正門前に立ち、児童生徒が安全に登校できるよう目を配る。1人暮らしの高齢者宅を訪れたり、パトカーで島内を一周したり。住民に声をかけ、ついつい話し込むことも。「『頼もしい』と声をかけてもらえるとうれしい。安心して過ごしてもらえるよう、住民に寄り添いたい」
 赴任後、印象深い出来事があった。市立高島幼稚園での交通安全教室。島には道路に信号機がないため、専用機材を使って横断歩道の渡り方を2歳児に教えた。車の往来が多い本土に行く時に備え、交通ルールを身に付けてもらう“高島らしい”任務だった。
 午後3時、高島港。一時寄港する軍艦島クルーズと定期航路の出港がちょうど重なる。クルーズのコースに含まれている高島石炭資料館などを見学する観光客と、定期航路の利用客が行き交い、1日で最も港に人があふれる時間帯だ。
 港周辺の警戒は重要な任務の一つ。背筋を伸ばし、二つの船や乗降客らの動きに目を光らせる。張り詰めた空気を少し和らげるのが、小鉄ちゃんの存在。「こんにちは」「この間はありがとうね」-。住民らが“愛車(ベビーカー)”に座る小鉄ちゃんに次々と声をかけ、有希子さんとも会話が弾む。
 1人で島を守る責任の重さを感じる毎日。だが、気負わずに「住民の支えがあるので、自分たちも安心して生活ができている。みんなと良好な関係を築いていくことが一番大事」。
 今日も午後3時、家族3人そろって港を出る船に手を振っている。

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