「奈落の底に突き落とされた」 被爆体験記の”降雨”の証言にも「客観的事実」と国は認めず【長崎市】

原爆に遭ったものの「被爆地域」の外だったため、被爆者と認められていない「被爆体験者」の救済をめぐり、国は被爆体験記を調査しました。

専門家の意見を踏まえ「客観的事実として捉えることはできなかった」と結論付け、体験者からは怒りと落胆の声があがっています。

被爆体験者の岩永千代子さん、88歳です。

「被爆者と認めてほしい」と約20年にわたり訴え続けています。

岩永千代子さん
「そうですね、奈落の底に突き落とされた。最後になって、またかと」

国は2023年、国立追悼平和祈念館が所蔵する「被爆体験記」の調査に乗り出しました。

広島では被爆地域の外にいた人でも放射性物質を含む「黒い雨」を浴びた可能性が否定できない場合などは被爆者と認めています。

一方、長崎では「客観的な記録がない」などと、雨が降ったことを否定する見解を示しています。

県と長崎市の要望を受けた今回の調査で、「体験記」3744件の中に雨に関する記述が41件、灰やちりなどの飛散物に関する記述が159件見つかりました。

しかし専門家からは「被爆体験記は執筆者がそれぞれの思いを記述したもの。データとしては信頼性に乏しい」「執筆年からかなりの年数が経過している。記憶の装飾がなされている可能性がある」などという意見が上がりました。

専門家の意見をふまえ、国は「降雨などを客観的事実として捉えることはできない」と結論付けました。

岩永千代子さん
「黒い灰や雨(を見たと)素直に書いてある」「それを嘘だと言われると、もう言いようがない」「これはどうですかと(証拠を)出しても出しても客観的がないと言われたら私たちはすがる術がない」

一方、国がアメリカで進めている残留放射線などについての調査をめぐり、県は「調査対象にイギリス公文書館などを加えるよう要望した」としています。

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