ついに防御率0点台 2軍戦5勝のソフトバンク育成2年目左腕に2軍監督が求めること「目先の1勝よりもう少し大きなものを」

4回の投球を終え、ベンチに向かう前田純(撮影・永田浩)

◆ウエスタン・阪神6―6ソフトバンク(19日、鳴尾浜)

ソフトバンクの育成2年目左腕・前田純投手(24)が「防御率0点台」に突入した。先発で6回を被安打4、無失点の好投を見せた。

この日の最速は143キロ止まりの軟投派だが、カーブをはじめとした変化球のコントロールが冴え「ちょっと腕が振れている感じがあって、かえって力んだ」という1回、いきなり無死一、二塁のピンチを招きながらも、阪神・小野寺を115キロのカーブで空振り三振、続く4番・大山を124キロのチェンジアップで三ゴロ併殺に仕留めるなど、その安定感あふれる投球ぶりが光った。

「自分の持ち味は、打たせて取ること。真っすぐが走っていたら、ボール球も振らせたりすることができる。バッターに的を絞らせないようなピッチングをしていきたいですし、それが生命線だと思っています」

身長189センチの大型左腕ながら、制球に苦しむ場面とは縁遠い。この日も2四球にとどめ、結局三塁は踏ませずじまい。6イニングで「0」を並べると、この日の試合前の防御率1.07から、一気に0.96の〝1点切り〟を果たし「うれしいですよね」。

ウエスタン・リーグでも堂々の防御率トップを走っているが「意識してもできるものじゃない。自分の中ではランナーが出たときとか、逆に力まないように『もう点を取られてもいいや』くらいの感覚で投げているんですけど、それがいい感じではまっているのかなと思います」と自己分析した。

主砲・山川穂高と同じ沖縄・中部商高出身。日本文理大を経て、昨年の育成ドラフト10位指名でプロ入りした。大卒での育成2年目ゆえに、今年も7月末に迫った支配下登録への切り替え時期がどうしても気にかかる。残り4枠をにらみ「狙っています」。この日は6点リードの9回にリリーフ陣が追いつかれてしまうという、まさかの試合展開で延長10回引き分け。6勝目こそ逃したが、ファームの先発ローテを守りながら5勝を挙げ、防御率0点台という、それこそ昇格へ向けての好アピール材料だらけ。ゆえに、松山秀明2軍監督の注文も、よりレベルが高くなる。

「試合をまとめてほしい、というわけじゃない。彼に何を求めるかというと、結果ではなく、将来の彼なんですね。目先の1勝より、もう少し大きいものを求めています。彼は器用だし、小手先でも抑える技術があるけど、それに頼って欲しくない」と、試合後にも前田純とじっくり話し合い、その方針を確認し合ったという。「もっと大胆に、変化球でかわしていくんじゃなく、全力でどこまでいけるのか。マックスに近いボールをどれだけ投げ続けられるのか。それを強めていくことが、先発ピッチャーとして1軍で投げていくことにはやっぱり必要。抑えたらOKじゃない。強く投げること、変化球でも強く投げる。そういうことが彼に求めていることなので」

前田純も、その〝要求値〟は理解している。「速さじゃなくて、キレだったり、球威の強いボール。それが求められていると思います」。投球術の高さは、驚異の防御率0点台が示している。そこに〝力強さ〟が加われば、先発タイプの長身左腕というセールスポイントは、間違いなく、支配下昇格への決め手になる。

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