“山深く染み入る静けさ”日本曹洞宗の第二道場「宝慶寺」 中国の僧「寂円禅師」が鎌倉時代に開山 大野市

福井県内の魅力を再発見する「小旅」のコーナーでは今回、750年を超える歴史がある曹洞宗の寺、大野市の宝慶寺(ほうきょうじ)を紹介します。山深い場所にあるこの寺は、修行にふさわしい静けさに包まれていました。

大野市の市街地から南西方向に車を走らせること約20分、整然と並ぶ杉の木立が現れます。さらに奥深く緑の参道を進むと、宝慶寺に到着します。

石段を上がっていくと、その先に荘厳な雰囲気の総門が現れ、「日本曹洞第二道場」と掲げられています。宝慶寺は鎌倉時代に寂円禅師によって開かれ、永平寺に次ぐ日本曹洞宗の第二道場として、長く大本山永平寺を支えてきました。寂円は中国の高僧で、日本から中国に修行に来ていた道元を慕い、道元の後を追って日本にやってきました。永平寺で修行をしていた寂円ですが、永平寺で権力争いが起こるなど周囲が騒がしくなったため、静かに修行できる場所を求めて、山を分け入り、この地にたどり着きました。

寂円は、宝慶寺から池田町に向かう途中にある「座禅岩」という岩の上で18年間、ひたすら座禅をしていたと伝わっています。宝慶寺の敷地の一角には、小さなお堂があり、18年間座禅を続けた寂円に従って身の回りの世話をしたとされるウシとイヌがまつられています。このウシとイヌは、寂円が托鉢に出る時は首から頭陀袋を下げてお供をしたと伝わっています。

寺の周りにうっそうと生い茂る杉林。その中に他の多くの杉を圧倒する木があります。「義雲杉」と呼ばれるこの木は、寂円禅師の愛弟子で永平寺第5世の義雲禅師が植えたと伝わる巨木です。その樹勢はいまも衰えません。

修行僧が日頃、坐禅を行う「僧堂」では、座禅体験をすることができます。座禅をするにあたって大切なのは「調身」。左右に揺れて背筋を伸ばし、耳と肩を平行に、鼻とへそを一直線にし、自らを顧みます。開始の鐘の音とともに、執着を捨て、ただ座ります。聞こえるのは鳥の声と水の音。山深く、染み入る静けさです。

寂円禅師が“修行の理想の地”と定めた宝慶寺は、豊かな自然の中、いまも変わらぬ静寂に包まれています。

〈宝慶寺〉
福井から国道158号線で大野市の和泉方面に向かい「篠座東」の交差点を右に曲がり、さらに約10キロ進んだところにあります。※座禅体験は予約が必要です。

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