10人の女性宿泊客らに...準強制性交等・準強制わいせつなどの罪 元オーナーの男(50)被害女性が語った「酒に睡眠薬」の実態【岡山・里庄町】

上下グレーのスウェットを着た、小柄で短髪の男が法廷内に座っていました。岡山地裁で行われている裁判です。送検時には、テレビカメラを見つけると【画像①】のようにカメラに向かって親指を立てていました。

男は経営する宿泊施設で10人の女性に...

自らが経営する岡山県里庄町のゲストハウスで、宿泊客の女性に薬を飲ませ性的暴行をするなど、準強制性交等や準強制わいせつなど罪に問われている男。

起訴状などによると、男は2018年から2022年にかけ、女性客や知人女性の合わせて10人に対し、睡眠作用のある薬物を飲み物などに混ぜて摂取させ、抵抗できない状態にした上、性交やわいせつな行為をしたなどとされています。

今年2月に行われた初公判で、男は
「覚えていない」
「繰り返し現れていた、目の前の黒い影から命令を受けた。実行しなければ殺される」
「向精神薬とアルコールの同時摂取により覚えていない」
と語り、犯行時は心神喪失状態だった、と無罪を主張。

一方で、検察側の冒頭陳述では、男が犯行時、
・カメラで映像を撮影し保存していた
・薬物を酒に混入すると、青色に変色することを知り、発覚しないよう深緑色の抹茶カクテルに混入していた

などと悪質性を主張しています。

缶酎ハイ2缶飲んだ女性 記憶なく気付いたら朝に

そして、きのう(6月19日)に行われた証人尋問では、10人の被害女性のうちの1人が、男がいる法廷とは別の部屋で、当時の状況などについて証言していきました。

検察の冒頭陳述によると、この女性は、2022年3月18日午後5時40分に宿泊施設(【画像④】)にチェックイン。

午後7時前に食堂で男が提供した缶酎ハイ2缶を飲んだところ、睡眠状態に陥り、気付いた時には翌朝の午前7時で、宿泊施設の和室の布団の上にいたということです。その際、缶酎ハイを飲んでからの記憶がありませんでした。

女性は、起床後体調が悪く、繰り返し嘔吐。帰宅後に記憶がないこと、体調の悪さを不安に思い、母に相談し、警察に相談に赴いたということです。

男に「ご馳走してあげるよ」と言われ飲んだ“水色の液体”

検察側からの証人尋問では、当時の状況が語られました。

(検察)普段お酒は飲みますか?
(女性)飲み会で飲む程度で、あまり飲みません(中略)自分では弱い方だと思う。
(検察)飲んだのはどんなお酒ですか?
(女性)アルコール度数9%の缶酎ハイで、柑橘系の味でした。
(検察)何で出されたお酒を飲んだのですか?
(女性)旅行中だし、男に「ご馳走してあげるよ」と言われたので飲んだ。
(検察)飲んだのはその1缶だけですか?
(女性)1本目を飲んでいる途中に、蓋が開いた缶酎ハイをまた渡されました。
(検察)それを飲んだ時に何か感じましたか?
(女性)飲み口についた液体が「水色っぽい」色だったと思いました。

検察側の冒頭陳述では、男は女性に欲情してわいせつな行為をしようと考え、女性の隙を見てこの缶酎ハイに睡眠薬を混入。抵抗できない状態にしてわいせつな行為をしようと試みましたが、何らかの理由でその目的を遂げなかったとしています。

(検察)水色の液体を見てどう思いましたか?
(女性)柑橘系なのに水色というのは不思議に思いました。2缶目の2~3口目を飲んだくらいで記憶がなくなって、そこからは覚えていません。次の日に起きたら頭がボーっとしていて、吐き気もあった。

「記憶をなくした間に何をされたのか」怖くて不安な気持ちに

その後、チェックアウト後も体調が戻らなかった女性は、警察に相談したところ、女性から睡眠薬の成分が検出されたことが分かったといいます。その睡眠薬の話を聞いた時に女性は...。

「記憶をなくした間に、何をされたのか分からない。自分が事件に巻き込まれたというショックがあった。怖くて不安な気持ちになった」といいます。

一方、弁護人からの「自分から睡眠薬を欲しいと言って被告からもらったか」「2缶目に渡されたのは柑橘系ではなくラムネ味の酎ハイではなかったか」の問いに対しては、女性は「そんなことはないです」とはっきりと否定しました。

女性が被告の男について語ったこと

この日の証人尋問で、最後に女性は男について話しました。

「当時のことを思い出すたびに、恐怖と不安な気持ちがある。被告には罪を認めて反省してほしい」

その言葉を聞いた男は、座ったままで表情を変えることはありませんでした。

今後の裁判では、被告人質問が行われ、男の責任能力の有無が争点となります。

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