本当に強いソフトバンク 大津亮介の続投に見た首脳陣の深謀遠慮 ロッテ種市篤暉を「削った」山川穂高と近藤健介の粘り【評論家の視点】

8回、ロッテの上位打線を三者連続の空振り三振に仕留め雄たけびを上げる大津(撮影・穴井友梨)

◆ソフトバンク3―1ロッテ(22日、みずほペイペイドーム)

先発の大津の球数は6回終了時で91球。ロッテの種市の出来の良さを考えたら、次の1点を失うとかなり苦しい。そろそろ交代かな、と見ていたが、首脳陣は続投させた。この決断がすごかったし、それに応えた大津、同点に追いつき逆転した打線もすごかった。

大津は前回登板した12日のヤクルト戦は中10日で5回7失点。今回も中9日で体が元気過ぎたのか、追い込んでからの勝負球がばらついていた。初回には厳しい判定もあって1点を失ったが、追加点を許さずによく粘った。最後の力を振り絞った8回の3者連続三振は本当に見事だった。

大津の続投には、小久保監督や倉野コーチの「今後の成長のため」という思いが込められていたと思う。今のホークスはチャンスを与えられた若手が結果で応える好循環ができている。自己最多の115球を投げた大津も、今回の投球でさらに一皮むけるはずだ。

7回の山川と近藤の粘りも素晴らしかった。種市のは6回終了時で75球。完投も見えるペースだったが、山川が11球目に死球、近藤が10球目を二塁打としてチャンスメークした。中軸の2人が勝負どころで球数を投げさせて体力と集中力を削り、柳町も粘って同点の犠飛。追いついたホークスの方に勢いがついた。

8回の周東の決勝ソロには正直驚かされた。苦労しながら粘り続けた大津の背中を、守備位置のセンターからずっと見ていたことで「何とかしてやりたい」という思いがあったことだろう。栗原の適時二塁打を含め、リーグ首位を独走している理由を改めて感じた。

昨季までは先発が粘りきれずに追加点を許し、負けゲームになってしまう展開も多かった。今回はそれとは対照的な強さを見せつけた。大津の将来も見据えた首脳陣が終盤もマウンドを託し、それに応えた粘りの投球に打線が奮起した。本当に強い勝ち方だった。(西日本スポーツ評論家)

© 株式会社西日本新聞社