意地の同点劇。新潟戦で目頭が熱くなった川崎FW小林悠の姿、そしてFW山田新らの奮起【コラム】

[J1第19節]新潟 2-2 川崎/6月23日/デンカビッグスワンスタジアム

川崎にとっては勝ちたかったゲームと言えるだろう。

それでも意地の勝点1は意味のあるものだったとも感じる。

前節(18節/6月16日)に国立で、昨年のJリーグ王者である神戸と対戦した川崎は0-1のスコア以上の差を見せ付けられて完敗。リーグ後半戦に向けて重要な一戦と捉えていたにも関わらず、勇気をもって前に出られなかった非常に悔しき敗戦となり、クラブとして19年ぶりの負け越しターンも決まっていた。

それだけに仕切り直しへ、新潟との一戦は、川崎にとって大事なゲームであった。序盤から高い位置でプレスをかけ、ボールを持てば選手はどんどんスペースへ走り込んでいく。その姿にこの一戦に懸ける想いが伝わってきた人も多かったのではないか。

勢いを活かして、17分には左サイドの崩しからマルシーニョが先制ゴールをマーク。しかし、今季の課題通り、徐々に足が止まり始め、ミスも増え、61分に藤原奏哉、90+7分に鈴木孝司に決められ、逆転を許したのは大きな反省材料である。それでも試合終了間際に、諦めない姿勢を見せ、山田新の劇的な同点弾へつなげた姿は、心を震わすエネルギーがあった。

【動画】新潟×川崎ハイライト!!

何より、この一戦、印象的だったのは負傷からいきなり先発に復帰し、キャプテンマークを巻いて最前線でチームを鼓舞し続けた36歳の小林悠の姿だ。

状態は完全ではないのだろう。それでも何度もピッチに倒れ込んでも起き上がり、ゴールを目指し続け、精力的にプレスをかける。66分はすでに身体は悲鳴を上げていたのかもしれない。それでも動けなくなってもピッチで戦う姿勢を示し続け、ベンチから止められ、その場に座り込むまで、決して前へ進むことをやめなかった姿には、自然と目頭が熱くなるものがあった。

“悠さんがあそこまでやってくれるんだから”

あの姿を見せられて燃えない選手はいないのではないか。

試合開始からではあったが、遠野大弥、佐々木旭らチームメイトたちがピッチを走り回る。そして小林と交代する際に力強い抱擁をかわしてエネルギーを注入された山田が、自慢の力強いドリブルで何度も突き進み、同点弾を決めた姿もグッとくるものがあった。

勝てなかった事実、90分のなかで時間によってパフォーマンスが落ちる点、守り切ることのできない面など、まだまだ修正すべきことは多岐に渡る。

今季より新陳代謝を高めるチームは、小林に頼り切っているわけにもいかない。今度は、そのバトンを受けた後輩たちが、周囲に熱を加えられる存在にならなくてはいけない。

何より重要なのは中3日で迎える次の湘南戦(20節/6月26日/U等々力)をどう戦うかだ。

新潟戦の価値を高めるためにも、再び心を打つようなゲームに期待したい。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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