長崎、広島の交流証言者 東京の村田さん コロナ禍乗り越え初講話 池田さん体験語り継ぐ

池田さん(手前)の体験を語る村田さん=長崎原爆資料館

 被爆者の体験を語り継ぐ長崎市の家族・交流証言者事業の定期講話で、東京都江戸川区のフリーライター、村田くみさん(54)が、長崎で被爆した池田道明さん(85)=西彼長与町=の体験を初めて披露。村田さんは「講話を通じて、継承活動の輪を広げたい」と意欲を語った。
 池田さんは6歳の時、爆心地から約700メートルの長崎医科大付属医院(現・長崎大学病院)で被爆。黒い雨に打たれ金比羅山で一夜を明かした。被爆直前まで一緒に遊び、命の恩人でもある同い年の「しげちゃん」を終戦後から探し続けたが、再会は果たせていない。2007年からは自身の体験を語り始め、子どもたちに戦争の悲惨さや平和の大切さを伝えている。
 村田さんは20年4月から広島の被爆体験伝承者として活動。長崎の体験も伝えようと、同年9月、長崎原爆資料館であった被爆者との交流会に参加した。原爆孤児に関心があったこともあり、池田さんと「しげちゃん」の話にひかれ、交流証言者を目指すことを決めた。
 しかしコロナ禍で来崎できず、思うように準備を進められないもどかしさに悩む日々が続いた。それでも「池田さんの体験を伝えたい」という思いが消えず、約2年前から体験を聞き取ったり、当時逃げた場所を池田さんとともに歩いたりするなどして励んだ。
 今月13日、同館での初講話を終えた村田さんは「一人でも多くの人に被爆体験を伝える意思が強まった」と振り返った。今後は全国の小中学校などでも体験を語り継いでいく。
 19日時点の家族証言者は15人、交流証言者は39人。このうち長崎、広島両市で活動するのは村田さんのみ。

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