引き取り手のない「無縁遺骨」 栃木県内に少なくとも308柱 10年で3倍に増加、対策急務に

日光市が無縁遺骨を保管する市営「鬼怒川霊園」の納骨堂。ほぼ満杯という=6月中旬、日光市鬼怒川温泉大原

 栃木県内25市町が2023年度に公営墓地などで保管した引き取り手のない「無縁遺骨」は少なくとも308柱あり、10年前の3倍に増えたことが23日、下野新聞社の調査で分かった。増加の背景に家族、地域関係の希薄化、生活困窮などがあるとみられる。高齢化による多死社会を迎え、無縁遺骨は今後も増えると見込まれ、対策は急務となっている。

 下野新聞社は県内市町に対し、13~23年度に保管した無縁遺骨の件数を年度ごとに調査した。13年度101柱だった遺骨は、17年度116柱、20年度178柱、22年度203柱、23年度308柱とほぼ右肩上がりで増えている。特に23年度は22年度比1.5倍と増加幅が大きかった。この10年間で保管した遺骨は計1711柱に上った。

 市町によっては遺骨の保管をNPO法人などに依頼しているケースや、件数自体を把握していない年度もあり、実際の数字はさらに多いとみられる。

 23年度最も多かったのは宇都宮市の181柱。うち生活保護受給者は115柱、生活保護受給者以外は63柱、行き倒れなどの行旅死亡人は3柱だった。次いで日光市36柱、大田原市31柱、那須塩原市26柱、壬生町12柱と続いた。

 宇都宮市はこの10年間で計1248柱を保管している。同市は市営霊園の納骨堂で1柱ごと保管するが、スペースに苦慮し、これまで年1回行っていた納骨堂地下への散骨を23年度から年2回に増やして対応している。

 大田原市は市役所内で一時保管後、市営墓地の一区画に納骨し、2年を目安に散骨している。20年度の13柱から23年度26柱に増えた那須塩原市の担当者は「保管場所が手狭になってきている」とする。

 小山市、真岡市などはNPO法人に納骨までを依頼している。

 淑徳大の結城康博(ゆうきやすひろ)教授(社会福祉学)は「家族・親族や地域関係の希薄化が社会の無縁化につながっている。未婚率の高さを背景に子どものいない高齢者も増えるだろう。葬儀は家族が担う役割だったが、公共サービスとして税金を使う状況にきていると考える時期にあり、その態勢づくりが必要」と指摘している。

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