【裁判員制度15年】辞退者減らす工夫必要(6月24日)

 市民が刑事裁判に参加する裁判員制度は今年、導入されて15年を迎えた。3月末までに県内で1477人が裁判員か、補充裁判員として審理に関わった一方で、辞退者は候補者全体の約7割に及ぶ。多様な立場や経験に基づく意見を司法に反映させる制度を成熟させるためにも、参加しやすい環境づくりを不断に進める必要がある。

 裁判員に選ばれれば原則、辞退できない。ただ、70歳以上の高齢者をはじめ、親族の介護や養育、事業に著しい支障が生じる恐れがあるなど一定のやむを得ない理由がある場合は例外的に免除される。

 制度が始まった2009(平成21)年の辞退率は全国平均で53.1%だった。以降は徐々に高まり、ここ数年は60%台が続いている。福島地裁によると、2023(令和5)年の辞退率は福島地裁が75.9%、地裁郡山支部が72.4%で、いずれも全国平均の66.9%を上回っている。

 制度導入の狙いの一つに、長期化が指摘されていた刑事裁判の迅速化があった。初公判から判決公判までの開始初年の実審理期間は、全国平均3.7日だった。2022年は17.5日と5倍近く伸びている。期間の短縮を重視して公判が丁寧さを欠く事態は避けねばならないが、法曹界からは揺り戻しが起きているとの声も聞かれる。

 審理期間が長引くほど、仕事や学業など裁判員の日常生活へのしわ寄せは増す。重大事件を扱う精神的な負担も大きい。守秘義務があり、活動への理解は伝わりにくい面もある。「裁判員が不安に思う点を解消していかねばならない」と訴える法曹関係者もいる。辞退率が高止まりしている現状を踏まえれば、制度の点検は不可欠ではないか。

 「刑事裁判は他人事だったが、関心を持つようになった」「自分の意見を伝える重要性を学んだ」といった声が裁判員経験者から福島地裁に寄せられている。選任対象は成人年齢の引き下げで18歳以上に広がっている。今後、中高生ら若い世代に「開かれた司法」を目指す制度の理念を伝えていくのも意味がある。

 法曹界は司法への関心を高める工夫が求められる。裁判員制度の意義を社会全体で改めて共有し、事業所などの十分な理解を得ていく取り組みも重要だ。(渡部純)

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