「供養の気持ち薄れている」 無縁遺骨、栃木県内で急増 移ろう時代にNPO嘆く

三松会が無縁遺骨を納骨する共同墓地(手前)=6月中旬、群馬県館林市

 栃木県内で増え続ける無縁遺骨。身元が分かり家族や親族と連絡が取れても、引き取りを拒否されるケースが大半だという。遺骨を管理する自治体は保管場所の確保に苦慮する一方、自治体側から火葬や納骨を依頼されたNPO法人は「供養の気持ちが薄れている」と時代の変化を嘆いている。

 「縁を切っているのになぜ連絡するのか」「急に引き取ってくれ、と言われても困る」

 2023年度に36柱の無縁遺骨を保管した日光市。同市は身寄りのない人が亡くなると、戸籍を基に親族を捜し文書や電話で知らせる。大半は誰かしら親族が見つかるが、引き取ってもらえるのは年1、2件。「迷惑をかけられた」などと関係性の希薄さや、所持金が少なく費用負担を理由に拒まれる場合もある。

 市で火葬を行い、立ち会うのは市職員1人のみ。担当者は「本来なら親族に見守られるのが望ましいのでしょうが」とつぶやく。

 遺骨は市営「鬼怒川霊園」内の納骨堂に5年間保管。この間も引き取り手が現れることはほぼなく、その後は同霊園内に合葬される。「遺骨は増える一方で納骨堂も満杯状態。これ以上増えたらどうすれば」。職員たちは頭を悩ませる。

 那須町では郵便物がたまり、不審に思った民生委員からの連絡で死亡が判明したことも。近所付き合いがなく、町の担当者は「20年前はこんなことはなかった」と地域のつながりの薄れを嘆く。高齢化も影を落とす。90代の兄と連絡が取れたが「体は悪いし、葬儀などの対応ができない」と拒否されることもあった。

 自治体側の依頼を受け火葬や葬儀、納骨などを担う群馬県館林市のNPO法人「三松会(さんしょうかい)」。真岡市や小山市など県内外の自治体から依頼を引き受けている。

 「どんな人でも等しく供養してあげたい。火葬だけの『直葬』はしたくない」。寺の住職でもある三松会理事長の塚田一晃(つかだいっこう)さん(58)は強調する。

 14人のスタッフが、遺体の引き取りや火葬の手続きなどを一手に担う。自前の式場でスタッフが参列して葬儀を行い、最終的に遺骨は戒名を書き込んだ巾着袋に包み管理する共同墓地に埋葬する。30年近く活動しており、同墓地の遺骨は5800柱超を数える。

 ただ塚田さんの思いは複雑だ。活動を始めた頃は納骨後に訪れた親族に泣きながら感謝されることがあったが、今では「火葬だけでいいのに」という声も少なくない。「感謝や供養の気持ちが薄れてしまったのか…」。時代の移ろいに表情を曇らせた。

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