「僕自身、明治大の学生という感覚も(笑)」榎本達也GKコーチの充実したセカンドキャリア「今まで見てきていない世界を経験」

大学サッカー界の主要タイトルである関東大学リーグ、総理大臣杯、インカレ(全日本大学サッカー選手権)において、ここ9年間でトータル9冠を成し遂げ、今まさに我が世の春を謳歌しているのが明治大だろう。今季の関東大学リーグでも8試合消化時点で6勝2分と、序盤から快調に飛び出し、首位に立っている。

大学サッカー界をけん引する、文字どおりの常勝軍団。そのコーチングスタッフのなか、元Jリーガーの名を見つけことができる。それが、榎本達也GKコーチだ。

「最初に(現役最後の所属チームである)FC東京の普及部コーチの話をいただいて、幼稚園児や小学生を対象にサにッカーを教えていました。(FC東京からの)指導者派遣という形で明治大のGKコーチに携わるようになり、今年で7年目です」

1997年に浦和学院高(埼玉)から横浜マリノス入りした榎本GKコーチは、身長190センチの大型GKとして注目され、アンダー世代の代表チームでも活躍。日本サッカー界に吉報をもたらした99年のワールドユース準優勝メンバーのひとりでもある。

10年間、在籍した横浜ではJ1通算112試合に出場。その後、ヴィッセル神戸、徳島ヴォルティス、栃木SC、FC東京と渡り歩き、16年のシーズンをもって引退し、翌年からセカンドキャリアをスタートさせている。

指導者として常に心がけているのは「チームの目標や方針に、しっかりコミットしていくこと」だ。

「明治大では、プロになるかどうか、その分岐点にいる学生たちを対象に指導しているわけですが、ゴールキーパーとしてのスキルアップはもちろん、様々なトレーニングを通して彼らの成長を手助けできたら、と考えています。

もうひとつは、人間形成の部分ですね。明治大では、そこをすごく重視してますから、サッカー選手としてだけではなく、人としてどう成長していけるか。そこにコミットできるような指導も心がけています。そのためには何より自分自身が日々、学び、視野を広げていかなければいけないと考えています」

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引退後、FC東京の普及部コーチを務めながら、ブラインドサッカーの日本代表GKとして“現役復帰”するなど、新たな分野に挑んだ。こうした経験を通して、様々な気づきを得ることができた。明治大では、プロとはまた異なる環境のもと、たくさんの刺激を受けているという。

「僕は高校からプロの世界に進んだので、大学サッカーの雰囲気や環境をまったく知りませんでした。そういう意味では、今まで見てきていない世界を経験させてもらっているので、すごく新鮮です。監督の栗田(大輔)さんはもともとサラリーマンで、サッカー以外の視野も広く、いろいろな観点からチームをマネジメントしています。監督から多くのことを学んでいますし、僕自身、明治大の同じ学生のひとりという感覚もありますね(笑)」

大学サッカー界随一の練習量と密度を誇る明治大は、午前練習でよく知られている。いや、午前どころか、早朝6時から始まることもざら。

「大学のスケジュールによって多少変わりますが、早朝練習が基本ですね。僕は自宅のある埼玉から通っています。選手たちが朝早くから一生懸命に取り組んでいるので、こちらとしても同じくらいの熱量で向き合わないといけない。そうしないと選手たちも信頼してくれないでしょう。しっかり準備して練習に臨んでいます」

練習が終わると、選手たちは三々五々、大学の授業に行き、榎本GKコーチは現在の所属先である東京ヴェルディに向かう。そこで、試合映像をチェックしたり、トップチームの練習をサポートしている。

現役を退いたら、指導者の道に進みたい――。そう考え、日本サッカー協会の公認ライセンスも取得。子どもから大人まで、様々なカテゴリーの現場を経験しながら、充実したセカンドキャリアを送っている。

いつかチャンスがあったらJクラブのGKコーチに――。それが、指導者として思い描く榎本GKコーチの次なる目標だ。

取材・文●小室功(オフィス・プリマベーラ)

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