【J1川崎が新潟戦で見せた劇的同点弾の意味(1)】90+7分の逆転弾を浴びた時、山田新は何を思ったのか……若きストライカーの渇望と、ベテランFW2人の見せたもの

アルビレックス新潟戦での川崎フロンターレの山田新 撮影:中地拓也

「そうですね、折れることはなかったです。時間は短いと思いましたけど、少ない時間でゴール取ることだけを考えていました」

川崎フロンターレの山田新がこう言葉にしたのは、アルビレックス新潟戦で2失点目を喫した時の心情である。その直後に劇的なゴールを決めた山田はあの瞬間、どう考えていたのか。それが気になって、山田新の囲み取材の最後の質問として投げかけたところ、“やはり”というような答えが返ってきた。

この試合の90+7分、気持ちは折れてもおかしくなかった。8分と表示された後半のアディショナルタイムの残り1分という段階で、チームは逆転弾を受けたのだ。若きストライカーは、諦めない気持ちを沸々と高めながらも、至って冷静にゴールだけを見据えていた。

山田はさらに「負けられない試合ではあったので、順位を含めて、僕がっていうよりかはチーム全員が失うものはないっていう思いでリスクを負って、とにかくゴールを奪いに行けたことが得点につながった」とも説明を続ける。

そう、確かにこの試合で気持ちが折れたように感じた選手はまったくなかった。それは1失点目、つまり、同点ゴールを被弾したときもそうだ。

■38歳FWに刺激を受ける36歳FWから掛けられた言葉

この試合、FWバフェティンビ・ゴミスはメンバー外になったものの、センターフォワードに入ったのはベテランFW小林悠だった。サンフレッチェ広島戦で負傷して以来、9試合ぶりの出場をスターティングメンバーで飾り、山田新は5試合連続でベンチスタート。山田は悔しい思いを胸に秘めていた。

アビスパ福岡戦では強引なゴールを見せるなど、その成長曲線は著しい。福岡戦後のミックスゾーンで、ゴールを決めた要因はフィジカルの強化にあるのか、あるいは技術の向上にあるのかと聞けば、技術面での成長があると話しており、その強靭なフィジカルを勝利に結びつける術を得始めている。

ただし、小林悠もいつもとは違った姿を見せていた。前線でボールを受け、周囲の選手の押し上げる時間を作るなどしていた。その意識について聞けば、「自分に入ったときには、絶対に失わないようにしようと起点にしっかりなりました。バフェが最近起点になっていたので、そういうところも見習いながら」と、いまだに進化を止めないことを明かす。

そして、「それプラス背後への動きができれば自分の良さも出せる」と自分の特徴も見失わず、むしろ、新しいスタイルの中で出そうとしていたのだ。

38歳のFWに刺激を受けて新境地を開こうとする36歳のFWから、「絶対に決めてこい!」と声を掛けられてピッチに入った山田が、発奮しないわけがなかった。先述したように、短い時間の中でも得点を奪うことに集中して、見事に応えた。66分間プレーした小林はシュート数でゼロに終わったものの、24分を戦った山田のシュート数は2。そのうち、一つがチームを敗戦から救ったのだ。

この試合に出場したストライカー2人、いや、バフェティンビ・ゴミスも含めた3人の“繋がり”がゴールにつながった。

(取材・文/中地拓也)

(中編へ続く)

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