【J1川崎が新潟戦で見せた劇的同点弾の意味(3)】佐々木旭に聞いた自己評価はまさかの「5点」。その真意は……中継映像には映らない場所でボールを呼び込んだワケ

アルビレックス新潟戦での川崎フロンターレの佐々木旭 撮影:中地拓也

疲労が重くのしかかる時間帯だったはずだ。後半42分。それにもかかわらず、川崎フロンターレの右サイド、高い位置を取って、両手を広げてボールを要求する姿があった。

中継映像では写らない場所で、必死にパスを呼び込もうとしたのは、佐々木旭。前半から左サイドバックとして再三再四、上下動を繰り返していた佐々木は、その直前に行われた選手交代の影響で右サイドバックにポジションチェンジ。視野が変わったことで難しい部分もあったはずだが、強くボールを要求した。

試合後の佐々木に、その呼び込んだ場面を覚えているか尋ねれば、しっかりと覚えていた。どんな気持ちだったかと重ねれば、「やっぱり点を取らなきゃいけなかった」と話し、こう続ける。

「いい試合をできていたので、引き分けではいやだ、なんとか勝ちに持ってきたかったという思いです。自分で打開したいという思いと、自分にボールを渡してくれれば何とかできるっていう自信がありました」

その言葉のように、アルビレックス新潟のサイドを佐々木は何度も切り裂いた。自ら仕掛けてクロスを上げた場面があれば、積極的なシュートも放った。その姿勢とプレーが、マルシーニョの先制点のアシストにつながっている。

■まさかの自己評価

「あの2人は技術的にすごい高いので、走ったら出してくれるって思ってました。なので、どんどん裏へのアクションを増やすように意識してました」

この試合でダブルボランチを採用した川崎において、佐々木はそのメリットを最大限に享受しようとした。山本悠樹と瀬古樹の技術力を信じ、前に前にと突き進んだ。

そもそも、佐々木にとって攻撃面は「自分に求められてること」だという。それを、ヴィッセル神戸戦ではなかなか出せなかった。

「前節は悔しい試合だったので、何とか今節はサポーターにも勝ちを届けたいって思いを持って試合に入りました。気持ちで変わっていくことが大事」

この1週間での心情をこう説明し、「クロスの精度はもっとこだわらないといけないと思いますけど、でも、やっぱり回数を増やさないと得点に繋がるシーンも少なくなると思うので、どんどん積極的に行きたい」とも話す。

積極的な姿勢を見せ、そして自信をつけている佐々木に、この試合での自己評価を聞いてみた。成長を続ける中でどのように捉えているか知りたかったからだ。すると佐々木は、言葉ではなく点数で答えてくれた。しかも、その点数が驚きだった。なんと、5点。しかも、謙遜などではなく、本当に申し訳なさそうにそう口にしたのだ。

■低評価の真意

「え、5点!?」

予想外の厳しい評価に思わず聞き直してしまったが、佐々木自身の中で理由があった。その真意を、次のように説明する。

「得点には関わりましたけど、やっぱうまくいかない時間帯で失点してしまうというのが今のチーム状況だし、後ろの状況だと思うので、もっと修正できるところがあったと思うんです。そういったところをできなかったっていうのがすごい後悔が残っていて、後ろとしては、(大南)拓磨くんとも話しましたけど、もっと声をかけてやらなきゃいけない」

ピッチに立つ時間が長くなり、そして、力強いプレーをできることで、佐々木の自身への評価軸はチームに勝利をもたらせるかどうかに変わっているようだ。

その気持ちを高める存在の一つが、サポーターである。心の中のもどかしさを、「選手としては何とか勝ちたいという思いでやってますし、アウェイでもこれだけのたくさんのサポーターが応援しに来てくれて、勝てない中でも毎試合応援してくれてるので、そのサポーターのためにも勝ちたいっていう思いが強いです。この試合もすぐに切り替えていい準備して、次、何とか喜び合えるように」と説明する。

とはいえ、好調な佐々木だ。このプレーを続けていけば、それも実現してくれるはず。そんな思いを言葉にすると、返ってきたのは責任感を込めたものだった。

「得点やアシストでチームを勝たせられる選手になりたいっていう思いが日に日に増してきてるので、すごい良いメンタリティでできていると思いますけど、やっぱり結果がついてきてないので。もっともっとみんなを巻き込めるような選手になればいい」

劇的な同点にも満足することのできない背番号5が、チームに歓喜をもたらす準備はできている。

(取材・文/中地拓也)

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