熊本市電が過去10年で3度目の運賃値上げを検討 経営難で「来年度は赤字転落のおそれ」

熊本市電が、経営環境の悪化を理由に運賃の値上げを検討すると明らかにしました。

熊本市電は2016年、150円だった運賃を20円値上げし、去年6月にはさらに10円引き上げました。

【近年の熊本市電の値上げ】
2016年2月: 150円→170円
2023年6月: 170円→180円

熊本市交通局によりますと、熊本市電の運賃収入は新型コロナ禍から回復傾向にあり、昨年度の運賃収入は約15億1000万円でした。

【熊本市電の運賃収入の推移】
2019年度: 15億7800万円
2020年度: 9億7900万円
2021年度: 10億5500万円
2022年度: 12億5300万円
2023年度: 15億1000万円

しかし物価高騰などが続き、経営環境は厳しい状況にあります。市交通局は昨年度、約1億1600万円の純利益を確保しましたが、これは物価高騰対策などで、市から補助金を受けたことが大きな要因です。しかし来年度以降はこの補助金も受けられないということです。

【熊本市の一般会計からの基準外繰出の補助金】
昨年度: 1億7400万円
今年度: 1億4200万円
来年度: なし

そのため交通局は6月25日の市議会で、今後も人件費の上昇や物価高騰などが見込まれることから、来年度は赤字に転落する恐れが高いと説明しました。

熊本市では来年度、市電の施設の保有と運行を分ける「上下分離」を行い、運行にあたる「上」は市が出資する財団法人が担い、市は「下」の線路や車両などを保有する方針です。

しかし運賃が180円のままであれば、「下」を担う市に影響はないものの、「上」を持つ財団法人の単年度収支は、初年度から赤字になる見通しということです。

こうしたことから交通局は、運賃の値上げを検討すると表明しました。

具体的な値上げの時期や運賃は示しませんでしたが、仮に現在から20円値上げして200円に引き上げた場合、「今後30年は収支が黒字になる見通しだ」としています。

具体的には、上下全体について来年度から30年間の累積収支を計算した場合、運賃が180円のままであれば30年間の累計で約2億8000万の赤字ですが、200円になれば37億3200万の黒字になるということです。

© 株式会社熊本放送