青学大1年でミスコン受賞、今は女優に 異色経歴の23歳の現在地「毎日必死です」

ミスコンから4年、俳優として活動中の中川紅葉【写真:舛元清香】

『FRESH CAMPUS CONTEST 2019』グランプリ受賞

日本一の大学1年生を決めるミス・コンテスト『FRESH CAMPUS CONTEST 2019』でグランプリを受賞した中川紅葉(青山学院大4年)は、俳優として奮闘する毎日を送っている。昨年、テレビ朝日系連続ドラマ『シッコウ!!~犬と私と執行官~』で憧れだった伊藤沙莉と共演し、圧倒的な存在感を目の当たりにした。中学2年時には、フィンスイミングで日本記録を更新し、その後は音楽に目覚めてプロのドラマーを目指すなど異色の経歴を持つ23歳。その魅力に迫った。(取材・文=福嶋剛)

埼玉で生まれた中川は、プリンセスや海賊に憧れる天真爛漫(らんまん)な少女だったという。

「活発な子でした。幼稚園からピアノを始めて、小学校に上がると水泳やバレエなど習いごとをいろいろとやりました。高学年になると鼓笛隊に入りたくて、ピアノからドラムに楽器を換えました。それがきっかけでドラムが大好きになりました」

中学2年だった2014年には、フィン(足ひれ)を装着して行なう水泳競技・フィンスイミングでジュニア短水路(50メートル)の日本記録を更新。代表に選ばれ、海外遠征も経験した。

「競泳をやっていたんですが、圧倒的に腕の力が弱くて、『足だけだったら勝てるのに』と思っていたら、たまたま隣のレーンで足ひれをつけた謎の競技を見つけました。『あれは何?』と思い、試しにやってみたらすごく自分に合っていたんです。気が付いたらジュニアの日本記録を更新していました。でも、中学生の時に極度のスランプになり、続けることが辛くなってしまいました。同じ時期、ドラムも上達してバンドにのめり込んでいたので思い切って『音楽の道に進もう』と決断しました」

中川には大きな影響を与えたロックバンドがある。

「[Alexandros]です。中学生の時に出会って、そこからはドロス([Alexandros]の愛称)が私の人生に大きな影響を与えてくれました。川上洋平さん(ボーカル、ギター)をはじめ、メンバーのみなさんの生きざまがカッコよくて、『彼らみたいにやりたいことをあきらめない人になりたい』と思うようになりました。そんな時、母から『好きな人たちを見ているだけじゃなくて、いつかその人たちと仕事ができるようにやる側になりなさい』とアドバイスをもらい、バンドを始めました。また、私も彼らと同じように青学の軽音部でバンドをやりたくて、受験しました」

青山学院大に合格した中川は、軽音部で新たなバンドを組んだ。

「作曲もやっていたので、ライブでお客さんを増やす方法を考えていました。そんな時に出会ったのがフレキャン(『FRESH CAMPUS CONTEST 2019』)です。『とにかく目の前のフレキャンを頑張るしかない』と思いました」

『FRESH CAMPUS CONTEST』とは、大学新入生を対象とした日本最大級のコンテスト。TBSの宇内梨沙アナウンサー、上村彩子アナ、日本テレビの滝菜月アナら数多くの局アナやタレント輩出している。審査方法はその年によって変わるが、主に動画配信、SNS発信などネットメディアを使ったアピールが中心。中川も毎日3時間の配信を5か月以上、続けたという。

「大変でしたけど、頑張りました。人によってはコスプレをしたり、歌ったり、いろんな企画で楽しませていたんですが、私は会話中心で皆んなが楽しめるような配信をしておりました。単純にバンドのお客さんを増やしたいだけだったので、優勝とかは全く考えていませんでした。ファイナリストに残った時も『もう、これ以上は無理だろうな』と思っていました」

だが、最終審査でグランプリを獲得した

「『絶対に獲れない』と思っていたので、受賞コメントとか全く考えていなかったんです。スポンサー賞をいただいたのに、ちゃんとコメントができなくて、終わった後に反省しました」

受賞後は音楽系の芸能事務所に所属したが、中川は俳優の道へと進んだ。

「初めは音楽のことしか頭になかったんです。実際に大学で組んだバンドを最近まで続けていたんですが、俳優としてのお仕事をいただく機会が増えてきて、『どちらも中途半端にやるくらいなら、今、チャンスがある方を選択した方がいい。俳優として一人前になった時に、音楽を再開すればいい』と考え方を変え、昨年12月にバンドを辞めました。たまたま最初の舞台がステージでギターを弾く役だったので、『こんな風にミュージシャンの役もできる』と思ったら、踏ん切りがつきました」

目標だった東京ガールズコレクション(『TGC 松山 2024』)に出演が決定【写真:舛元清香】

「フレキャンが俳優という扉を開いてくれた」

俳優としては3年目を迎えたが、全てが学びの時期だという。

「毎日必死です(笑)。セリフ覚えが悪くて、なかなか頭に入らないんです。現場での急な対応にも追いつけないので、しっかりと準備をするようにしています。でも、私がやってきたスポーツに『似ている部分もあるのかな』って思っています。『今、すぐこのフォームに変えて泳いでみて』と言われながらやってきたので、それが役者のお仕事にも生きていると思いました。今年1月は、『アイドル誕生 輝け昭和歌謡』(NHK BSプレミアム4K)という実話を基にしたドラマで、ピンク・レディーのケイさんの役を演じさせていただきました。ダンスと歌が苦手で大変でしたが、絶対に成れないアイドルを演じることができるのも、俳優の面白さだなって感じています」

昨年7月期のテレビ朝日系連続ドラマ『シッコウ!!~犬と私と執行官~』では、保護動物カフェに出入りするトリマー役として出演。憧れの俳優と遭遇した。

「伊藤沙莉さんです。役の幅も広いですし、バラエティーに出てもめちゃくちゃ面白いですし、誰も真似できない存在。すごくすてきで『私もいつか誰も真似できない俳優になりたい』と思ってきました。実際にお会いしたら、優しくてカッコいいお姉さんで、もっと大好きになっちゃいました(笑)」

中川はMV(ミュージックビデオ)にも多く出演している。

「最近はNovelbrightのボーカル竹中雄大さんと池内ヨシカツさんの『Lonely』やTENSONGさんの『貴方のことが好きです』に出演させていただきました。2つとも恋愛ドラマ仕立てで、セリフのない役を演じる勉強にもなっています」

5年後の目標を聞くと「俳優としてもっと高みを目指したい」と答えた。

「祖父母には、私がテレビに出ている姿を見せたいので、いつか朝ドラや大河ドラマに出ることが夢です。また、作品の中でいつかミュージシャンの役をやってみたいです。他にもバラエティーやラジオなど素でしゃべるお仕事もやってみたいですし、いろいろ挑戦できたらなと思います」

最後に「中川にとってミスコンとは?」と聞くと、「今の自分を見つけるきっかけ」と語った。

「フレキャンがなかったら、バンドを続けながら会社員として働いていたかもしれません。芸能界で上手くいかなかった時を考えて、いろんな資格を取りました。例えば化粧品会社に就職できるように化粧品検定の1級を持っています。でも、両親には『あなたは絶対に定時で出社できる人じゃない』って言われました。確かにそうなんです(笑)。そんなタイミングで俳優としてのお仕事をいただけるようになったんですが、フレキャンが俳優という扉を開いてくれたと思っています。そして、密かに目標にしていた東京ガールズコレクション(『TGC 松山 2024』)に出演が決まりました。愛媛県武道館で7月13日に開催されるのですが、期待と不安で今からドキドキです(笑)。素敵な舞台になるよう頑張ります」

□中川紅葉(なかがわ・くれは) 2000年9月1日、埼玉県生まれ。青山学院大1年時、『FRESH CAMPUS CONTEST 2019』でグランプリ受賞。雑誌『Ray』Campus Girl、22年に俳優デビュー。フジテレビ系『ナンバMG5』(22年)、NHK『ひきこもり先生 シーズン2』(22年)、テレビ朝日系『シッコウ!!~犬と私と執行官~』(23年)、ABEMA『花束とオオカミちゃんには騙されない』(23年)、NHK『アイドル誕生 輝け昭和歌謡』(24年1月)などに出演。福嶋剛

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