鹿児島湾内サメ注意! 船が行き交う港近くで養殖網食い破る 湾奥や東シナ海側でも被害 海水温上がり分布域北上の可能性

いけすの網を食い破るサメ=11日、垂水市(丸陽水産提供)

 鹿児島県内の養殖業で、サメにいけすの網を食い破られる被害が相次いで確認されている。専門家は、近年の地球温暖化で鹿児島湾や甑島周辺も海水温が上昇しており、サメなどの分布域が変化していると指摘。県や県漁連は被害の実態把握を進めている。

 垂水市海潟の鹿児島湾内で、カンパチを養殖する丸陽水産では11日、出荷前のカンパチを移した化繊製の網が破られ1600匹が逃げ出し、1000万円相当の被害が出た。網にはサメが食いついていた。深見陽介社長(44)は「まさか船が行き交う港近くまで来るとは。漁業もだが、小学校の遠泳シーズンなども近づいており心配」と気をもむ。

 垂水市漁協では5月下旬以降、ほかに二つのいけすも網を破られた。いずれも出荷を前に、金網から化繊の網に移し替えたタイミング。同漁協の担当者は「現在は出荷前も金網に入れ、その日に水揚げしている」。湾奥にあたるブリ養殖が盛んな同市の牛根漁協でも今年、同様の被害が出た。

 被害は東シナ海側でも。薩摩川内市甑島の日笠山水産では23年9月、カンパチの稚魚4000匹を養殖するいけすがサメに破られた。半数の2000匹が逃げ、被害額は約100万円。日笠山誠社長(52)は「バショウカジキ漁の網にもかかり、近年は魚体も大きくなっている。対策しようがなく、網を切って逃がすしかない」とため息をつく。

 県水産振興課の板坂信明資源管理監は「各振興局を通じ各地の被害状況を調査している」、県漁連の市田恵八朗会長(63)も「被害が増えているのは事実。何らかの対策を考えないといけない」と話した。

 鹿児島大学水産学部の大富潤教授(61)によると、垂水のサメはメジロザメと見られる。主に奄美以南で生息しているが、「海水温の上昇で分布域が北上している可能性がある。夏の間は漁業被害が増えるかもしれない」と指摘した。

 一方で「メジロザメはいわゆる人食いザメではなく、人への被害はそこまで心配しなくていいが、同じ湾内で確認されているシュモクザメには気をつけてほしい」と呼びかけた。

いけすの網を食い破ったとみられるサメ=11日、垂水市(丸陽水産提供)
サメに食い破られたいけすの網=11日、垂水市(丸陽水産提供)

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