EU当局、銀行AT1債で報告書 価値上振れを懸念

Huw Jones

[ロンドン 27日 ロイター] - 欧州連合(EU)の銀行監督機関は、域内銀行が危機の際に資本不足を補うため活用する高リスク債券について、価値が上振れる可能性に懸念を示した。

金融危機以降の資本増強策として銀行は、劣後債の一種である「Additional Tier 1(AT1)債」の発行を開始。偶発転換社債(CoCo債)」とも呼ばれ、発行体の資本水準が一定水準以下になった場合、株式転換や元本削減などの可能性がある。

欧州銀行監督機構(EBA)は27日、AT1債の発行法についての調査報告を公表、AT1債に関する情報をより標準化し、その価値をより正確に反映するための新たな指針を盛り込んだ。AT1債を発行する際に銀行が独自の調整を加える余地を制限することを目的としている。

EBAは、会計原則に基づき銀行のバランスシートに計上される債券の「帳簿価額」と「名目価額」の違いを指摘。健全性の観点からのTier1(CET1)以外の資本測定には、損失カバーへ利用可能な総資本の過大・過小評価を防ぐために帳簿価額を用いることが必要で、実際の損失吸収能力を反映することが不可欠とした。

AT1債を巡っては、経営危機に陥ったクレディ・スイスをUBSが救済合併するのに当たり、クレディ・スイスのAT1債の価値がゼロになったことで訴訟が起きるなど、問題が起きている。

クレディ・スイスのAT1債を巡る混乱受け、各国の規制当局は、資本バッファーとしての債券活用について変更が必要かどうか検討している。

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