ホリプロカウトキャラバン出身の21歳が『ハリポタ』新キャストに抜てき「芸能人生の転機に」

2022年からホリプロに所属している飛香まい【写真:北野翔也】

21歳・飛香まいインタビュー

俳優の飛香まい(21)が、東京・TBS赤坂ACTシアターでロングラン中の舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』に、今夏からの新キャストとしてローズ・グレンジャー・ウィーズリー役で出演する。2020年に『第44回ホリプロタレントスカウトキャラバン ミュージカル次世代スターオーディション』ファイナリストに選ばれ、22年からホリプロに所属。好きなエンタメは「宝塚歌劇と昭和歌謡」と話す21歳が、人気舞台作に出演できる喜びや抱負を語った。(取材・文=大宮高史)

取材の日の朝、飛香はロンドンから帰国したばかりだった。ロングラン中の『ハリー・ポッターと呪いの子』オリジナル版を観劇してきたという。

「稽古に入る前に、絶対に本拠地で見たいと思っていました。日本版も何度も見ていましたが、ロンドンの観客は全世界から来ている上に、客席の反応がとてもいきいきとしています。舞台上で笑うシーンがあると客席もどっと笑って、まるでバラエティー番組の効果音でした。演劇って、本当に客席と舞台が一体になってエンタメになるんだなと実感しました」

ロンドン版は2部構成。通しで見ると5時間以上になるが、飛香は隣の観客と仲良くなるほど感動を共有していた。

「お隣がイギリス人のご家族で、映画や小説にまで話題が及んで語ってしまいました。日本版だと登場しないハグリッドがいたり、ハリーの少年時代のエピソードもロンドンの舞台で見ることができました。こうしてオリジナル版の魅力をスポンジのように吸収して、これからこの素敵な舞台に出演できることを光栄に思います」

福岡県出身。物心ついた時から舞台、中でも宝塚歌劇に夢中になった。

「小学1年生の頃から『私は役者になりたいんだ』と決めて、宝塚の脚本とDVDやブルーレイを見て、1人で台詞を覚えていました」

そんな日々を経て、20年に「第44回ホリプロタレントスカウトキャラバン」に応募した。

「地元で通っていたジャズダンススクールの先生が、スカウトキャラバンの広告を見て勧めてくれました。コロナ流行の最中でしたから審査もリモートで受けていましたが、『これを機に自分の人生を変えるんだ』と最終選考まで強気でいられました。選考が終わってからファイナリストの同期に『ずっと燃えてたね』と言われました(笑)。それは今でも笑い話になっています」

夢だった俳優の道を邁進中だ【写真:北野翔也】

宝塚&昭和歌謡好き「流行について行くのに必死」

大学進学を機に上京。俳優業に加え、ファッション誌『Ray』でのキャンパスガールやラジオの仕事も経験し、学業との両立にいそしんでいるが、「宝塚の楽曲と昭和歌謡しか知らなくて、流行について行くのに必死です」という一面もある。

「幼い頃から、お家でも家族と出かけた車の中でも昭和の歌謡曲を聴いて育ってきました。カラオケでも昔の曲ばかり歌っていて、友達が聴くようなジャンルは全く詳しくなくて。TikTokを始めたので、最近の流行りはそこから吸収しています。でも、昭和好きをアピールし続けたおかげで、ホリプロの先輩方と歌謡曲好きユニット(山崎裕太、山崎エリイ、山内鈴蘭、竹野留里との『カセットガール』) に恵まれたりもしました」

好きな舞台への猪突猛進ぶりが実ってつかんだ『ハリポタ』への出演。大きな経験になりそうだが、「この作品がどんな進化を与えてくれそうか、それを探しているところです。ローズという役を通じて、『私はこういう人間で、こんな強みがあるんだ』を知りたいです」と目をキラキラさせた。舞台版は、小説の最終巻である『ハリー・ポッターと死の秘宝』から19年を経た時代の物語。ローズ・グレンジャー・ウィーズリーは、ハーマイオニー・グレンジャーとロン・ウィーズリーの娘になる。

「ローズは自由度の高い役だなと思います。特にロンドン版で日本版以上に強く感じました。もともと元気な性格の子なのですが、フレッシュなローズ像にこだわらずに繊細さやはかなさを見せていきたいですね。私自身は『大人っぽい』と言わることが多いので、今作では“少女らしさ”をいきいきと見せていくことが課題です」

そう言いつつ、飛香は原作から愛してきたシリーズのキャラクター研究もぬかりない。

「ローズの元気の源には、家族愛があると思います。ロンとハーマイオニーの性格を受け継ぎつつ、強がりで勝気なところが好きです。朗らかで人を笑顔にさせる言葉選びができて、魔法の才能もあります。映画でシリーズを見ていた方にも『やっぱり、2人の子だ』と思ってもらえるクオリティーを目指していきます」

好きなカルチャーを語り出すと止まらない。

「ヘアスタイルも宝塚の娘役さんばかり参考にしています。(宝塚で)昭和歌謡が使われているショーに出会うと、俄然に気持ちも高揚します。昔のヒット曲が使われることも多いので、そんな風に好きなものと好きなものが融合する時があると、たまりませんね」

デビューから3年目で、俳優を目指す原点になった演劇界で大役をつかんだ。「間違いなく、私の芸能人生の転機になります」。ロンドンへ“聖地巡礼”するほど貯めてきた情熱。飛香はそれをこの作品にぶつけていく。

□飛香まい(あすか・まい) 2002年8月12日、福岡県生まれ。20年12月に開催の「第44回ホリプロタレントスカウトキャラバン ミュージカル次世代スターオーディション」ファイナリストに選出。22年に俳優活動を始め、舞台『恋砂-れんさ-廻』、『幕が上がる』に出演し、『46番目の密室』ではミステリー歌劇に出演。NHK『正義の天秤2』、TBS系『不適切にもほどがある』、フジテレビ系『アンメット』などドラマにも出演。大宮高史

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