チームの愛称は“カーディナル”佐々木麟太郎が入学したスタンフォード大は文武両道の名門【アメリカ大学野球の世界:第1回】<SLUGGER>

花巻東高で通算140本塁打を放った佐々木麟太郎が入学したことで、にわかに脚光を浴びているスタンフォード大。文武両道でも知られるアメリカ屈指の名門校について掘り下げてみよう。

スタンフォード大は、米国大統領からノーベル賞受賞者、巨大企業の創設者など数えきれない著名人を輩出し、世界大学ランキングでは常にトップ5の評価を受ける超がつく名門大学だ。スポーツチームの愛称は「カーディナル」。ゴルフのタイガー・ウッズやトム・ワトソン、テニスのジョン・マッケンロー、アメフトのジョン・エルウェイ、水泳のケイティ・レデッキーといった大物を輩出する文武両道の大学でもある。

野球部は1892年創設と非常に長い歴史を持つが、全盛期を迎えたのは1980年代以降。1977年に就任したマーク・マーキス監督の下でNCAA(全米大学体育協会)トーナメント進出の常連校となり、2度のカレッジ・ワールドシリーズ優勝(1987年、1988年)もマーキス監督時代の実績。自身も、本人もNCAA選出の年間最優秀監督に3度(1985年、1987年、1988年)輝いている。

マーキス時代の終盤は不調で、2005年以降はカンファレンス優勝からも遠ざかっていたが、2018年にデビッド・エスカー監督が就任すると14年ぶりに優勝。この時の主力選手に、現在カブスの正二塁手として活躍するニコ・ホーナー(カブス)がいる。 歴史ある野球部だが、メジャーで活躍した選手の数は意外に少ない。筆頭格は1990年代~2000年代にかけてオリオールズ、ヤンキースで活躍したマイク・ムシーナ。メジャー通算270勝を挙げ、スタンフォード大出身者では唯一の殿堂入りを果たしている。野手ではゴールドグラブを7度受賞し、通算1838安打を放った名捕手ボブ・ブーンが最も有名。父レイ、息子のブレットとアーロン(現ヤンキース監督)との親子三代選手としても知られる。

現役では、前出のホーナーに加え、昨年のWBCで韓国代表として出場したトミー・エドマン(カーディナルス)が筆頭格。投手では、22年に15勝を挙げたカル・クォントリル(ロッキーズ)が今季も好調だ。打者ではホーナーの他、手首の故障で長期離脱中のトミー・エドマン(カーディナルス)が今後どれだけ数字を伸ばせるか楽しみだ。

佐々木麟太郎は早ければ2026年にドラフトで指名を受けることが可能。日本で高校野球歴代最多とされる通算140本塁打を放ったスラッガーは海を渡っても怪物ぶりを発揮できるのか。まずはポール・キャリーの持つ大学通算記録の56本塁打に挑む。そして、ゆくゆくはカルロス・クエンティンが持つスタンフォード大出身者のメジャー通算本塁打記録(154本)更新にも期待したい。

文●城ノ井道人

【著者プロフィール】
しろのいみちと。会社勤めの後、渡米してMLB記者として全米を飛び回る。。日米問わず若手有望株への造詣が深く、仲間内で「日本版ファンタジーリーグ」を毎年開催し、次代のスター発掘に余念がない。

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