北海道から移住の若者に「能登に来てくれたのにごめんね」 地元の人のやさしさがホテルオープンの原動力に 石川・珠洲市

能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県珠洲市に7月、小さなホテルがオープンします。若き支配人は被災しても前を向き、宿泊客と地元住民をつなぐ交流の場を作ろうと奮闘します。

支配人・畠山陸さん「このホテルの自慢はこの景色ですね。街から若干離れるエリアだからこそ、すごく静かで波の音も聞こえる。能登らしさががっつり見える様な景色がここの魅力」

7月1日、珠洲市上戸町南方に開業するホテル「notonowa(のとのわ)」

ホテルの支配人、畠山陸さん(27)は、能登の豊かな自然やそこに暮らす人々に惚れ込み、2023年北海道から移住しました。

支配人・畠山陸さん「里山里海の暮らし方が、❝百姓文化❞があっていろいろな仕事ができる方がいる。今でいうマルチワーク、パラレルワークという言いかえができるかなとか。お祭りという発散する場所がある、これって今のリトリートじゃないかとか、一周回って最先端だなと思った」

長年使われず廃墟のようになっていた宿泊施設のオーナーとの縁で、新たなホテルの立ち上げを計画し、2月のオープンに向け改修工事をしていたところに、元日の地震が襲いました。

手を入れたばかりの壁や天井が崩れ、一度は開業を諦めかけたといいます。

支配人・畠山陸さん「できるのか?という…そもそもこの町で道も通ってなかったですし水も電気もない状態で、そもそもできるのか、やった所で誰が来るの?というのがあった」

水道や電気といったインフラの遮断に、観光業全体への打撃。

それでも再び前を向いたのは、地元の人のある言葉がきっかけでした。

支配人・畠山陸さん「(地震直後に)泣きながらお世話になっているお母さんに『能登に来てくれたのにごめんね』って言われたんですよね。別にお母さんが悪い訳じゃないですし、僕自身も自分で選んでこっちに来ているのに『ごめんね』って言われた時の複雑さとか、言わせてしまっている申し訳なさみたいのがあって。それを感じた時に、こっちの人たちのどれだけ人を大事にしているかとか、地域を思っているかっていうことを思い知らされて」

7つある客室は、能登の自然をモチーフにした落ち着いた色合いで、すべての部屋から珠洲の穏やかな海が一望できます。

1階にはカフェバーも整備され、観光客だけでなく地元の人たちが気軽に集い交流できる場所を目指します。

支配人・畠山陸さん「能登の魅力って暮らしと人だと思うので、その魅力に気づいてもらえるような、外から来た人も気づけるし、ここに住んでいる人たちも自分の暮らしに誇りを持てるような。暮らしを魅力的に再度認識してもらえるような居場所になればいいなと思っています」

地元の人たちからも期待が寄せられます。

地元の人「結構やよ。うちも賑やかになって。オラも今度から良い服着とかないと」
支配人・畠山陸さん「毎日見に来てくれるんです、様子を」「やるしかないなって。この町がこんな状態だからこそ、悲惨ですごい残酷な状況だからこそ、何か新しいことをおこしてみんなを、能登を後押しする役割は絶対どこかで必要だから」

珠洲のにぎわい創出へ、小さなホテルでの大きな挑戦が始まっています。

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