かつての2強「横浜FM」と「川崎」はなぜ凋落したのか(1)横浜FM「史上初のACL優勝」と川崎「橘田の左SB起用」、両チームに共通する「失点」

本来アンカーとしてプレーする橘田健人。彼のサイドバック起用は、川崎フロンターレの苦しい台所事情を感じさせる。撮影/原壮史(Sony α1使用)

今季のJリーグもシーズンを折り返した。さまざまな変化が見られる中、気になるのが横浜F・マリノスと川崎フロンターレの不調である。近年のJ1を席巻してきた2強は、なぜ急激に勢いを失ったのか。サッカージャーナリスト大住良之が考察する。

■タイトルを分け合ってきた「2強」の凋落ぶり

Jリーグ2024も折り返し地点を過ぎ、明暗が分かれてきている。優勝争いをするグループ、なんとかチームを整備し、上位争いに加わっていこうというグループ、そして自動降格となる「ボトム3」を逃れようとするクラブ。その中で気になるのは、2017年から2022年にかけての6シーズンでタイトルを分け合ってきた川崎フロンターレと横浜F・マリノスの「凋落」ぶりである。

6月26日の第20節終了時点で、川崎は5勝7分け8敗、得点28、失点29、勝点22で20クラブ中15位。「降格ライン」の18位湘南ベルマーレ(勝点16)との勝点差はわずか6(2試合分)で、十分「危険水域」と言える。

一方の横浜FMは1試合少ない19試合ながら、7勝5分け7敗、得点30、失点28、勝点26で12位。首位を行く町田ゼルビア(勝点40)から遠く離され、Jリーグのタイトル奪回へのモチベーションも盛り上がらない。

■クラブ史上初「ACL優勝」を目前にしての敗戦

横浜FMの現在の順位には、1試合少ないということ以外にも大きな要因がある。AFCチャンピオンズリーグである。川崎は2月の「ラウンド16」で敗退したが、横浜FMは2月から5月の決勝戦まで4ラウンド、計8試合を戦い、その間にバンコク(タイ)、済南(中国)、蔚山(韓国)、アルアイン(UAE)への遠征をこなさなければならなかった。

なかでも、アルアインとの決勝戦は、ホームで2-1の先勝の後、アウェーでの第2戦は、1-2という希望の持てるスコアで迎えた前半アディショナルタイムにGKポープ・ウィリアムがレッドカードで退場になり、後半にバタバタと失点を喫して1-5の敗戦というショッキングなものとなってしまった。クラブ史上初のACL優勝を目前にしての敗戦は、大きなダメージになったに違いない。

帰国してすぐ、ACL決勝から4日後の柏レイソル戦は、チーム一丸の戦いで4-0の勝利を得たが、その後は2勝3敗と、明らかに疲労の色が濃い。

■両チームに共通する「DF陣の故障者」の多さ

両チームに共通するのは、失点の多さである。現在首位の町田ゼルビアは20試合で得点31と、横浜FM(30=19試合)、川崎(28)と大差はないが、失点はわずか16。これに対し横浜FMは失点28、川崎は29と、守備に問題があるのは明白だ。

その一因は、DF陣に故障者が多いことだ。横浜MFのDF陣で出場時間が1000分を超しているのは、センターバックの上島拓巳と右サイドバックの松原健だけで、左サイドバックバックの永戸勝也とセンターバックのエドゥアルドは800分台、センターバックの畠中槙之輔は300分に満たない。両サイドバックができる小池龍太も、昨年の大ケガから4月にようやく復帰したものの、わずか3試合に交代出場しただけで以後ベンチ入りメンバーから外れた。

加藤蓮、渡邉泰基ら若手が伸びているが、守備ラインの顔ぶれが試合ごとに変わる状況は極めて良くない。

川崎は、横浜FM以上にDFラインの構成に苦慮している。右サイドバックの山根視来と左サイドバックの登里享平が抜けた今季、川崎はセンターバックの丸山祐市と右サイドバックのファンウェルメスケルケン際、そして左サイドバックの三浦颯太を補強したが、三浦が4月上旬に大ケガを負って戦列を離れ、守備の大黒柱となるべきセンターバックのジェジエウも筋肉系の故障を繰り返し、出場時間を伸ばせない。

さらに若手の成長株、センターバックの高井幸大がU-23日本代表の活動で1か月間チームを離れたのも痛かった。その結果、本来は「アンカー」として中盤に不可欠な存在である橘田健人を左サイドバックとして起用するという「非常事態」も起きている。

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