苦しむ人へ「人は変われる」 生活体験発表大会で長崎県内最優秀  佐世保中央高 定時制夜間部3年 若松さん

「人は『新しい自分』に変わることができる」と話す若松さん=長崎市内

 県内の定時制、通信制高校に通う生徒たちの本年度「生活体験発表大会」(県高校定時制通信制教育振興会主催)で、「新しい自分」と題して語った県立佐世保中央高定時制夜間部3年、若松葉瑠奈(はるな)さん(18)が最優秀賞に輝いた。家庭での暴力や同級生のいじめに苦しみ、不登校になったが、今は新しい仲間にも出会い、日々を力強く、前向きに生きている。「人は、考え方次第でどんな風にでも『新しい自分』に変わることができるんだということを伝えたい」。本県代表として全国大会に臨む若松さんは、かつての自分と同じような境遇の人たちにエールを送る。

 〈私は(実の)父親の顔を知りません〉
 大会で、こう切り出した。6、7歳の頃、当時の義父から暴力を受けるようになり、機嫌が悪いときは一晩中押し入れに閉じ込められた。ただただ、怖かった。「この人はお義父さんのように怒り出さないだろうか」。そんな恐怖心から他人の顔色をうかがうようになり、自分とは違う考えにも「そうだよね」と話を合わせた。
 小学4年の頃。友達と話をしていて、いつものように相づちを打った。それが同級生の悪口を言ったと勘違いされ、仲間外れにされた。それは1年ほど続いた。

 〈もう全てが嫌になり、学校に行かなくなってしまいました〉
 中学生になっても不登校は続いた。だが、ある日。共通の趣味を通して仲良くなった唯一の親友に、過去のいじめ体験を告白すると、大きな声でピシャリと指摘された。
 「人に合わせるあなたにも問題がある」
 目が覚めた思いだった。高校進学は考えていなかったが、その親友は応援してくれた。「今からでも変わらんね。今からでも変えられるよ」と。

 〈それからの私は、高校への進学を真剣に考え、しっかり中学校にも通い出しました〉
 家計が苦しかったため、高校は全日制ではなく、働きながら学べる今の学校に進んだ。行きたい学校ではなかったが、入学してみると自分以上につらい境遇の人たちがいることを知り、強い絆で結ばれていった。そして、新たな仲間たちに支えられ、生徒会長を務めた。さまざまな活動に取り組み、初めて味わった達成感。来春、県外に就職する若松さんは、発表の最後をこう締めくくった。

 〈大切な友人たちを心の支えに新しい未来へ向かっていきます〉
 このほど、長崎市内であった本年度大会には各校の校内選考を経て15人が出場。7分の持ち時間で、自身の体験や思いを語った。若松さんは不登校を乗り越えた力強さ、豊かな表現力などが評価された。若松さんは力を込める。「かつての私は『自分ばかりが不幸だ』と人のせいばかりにしていた。もし、自分と同じ境遇の人がいるのであれば、自分の中の否定的な考え、思い込みに押しつぶされないよう、前向きに頑張ってほしい」
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 最優秀賞にはこのほか、同校通信制2年の碇屋実慈(みちか)さん(23)、3年の植村信子さん(31)が選ばれた。


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