入市被爆認定 長崎市控訴せず 年明け、女性に手帳交付

 長崎市の女性(86)を被爆者と認め、被爆者健康手帳の交付を市に命じた長崎地裁判決について、市は23日、控訴しないと表明した。市は来年1月4日以降に女性へ手帳を交付する方針。
 市役所で記者会見した市原爆被爆対策部の中川正仁部長は「今回は被爆の事実認定を争う個別案件であり、裁判所の判断を尊重した」と理由を説明。今後の手帳交付を巡る市の審査の在り方については「基本的な考え方は変わらないが、今後は裁判所の判断も参考にして審査に臨みたい」と述べた。
 女性の支援者で、市民団体「平和活動支援センター」の平野伸人所長(74)は「高齢の被爆者にとって朗報だ」と判決を歓迎。その上で、「今後、判決が審査にどんな影響を与えるか注視したい。市には(高齢化する)被爆者に寄り添った精いっぱいの努力をしてもらいたい」と求めた。
 女性は長崎への原爆投下翌日に家族らと疎開先から市内に入り、入市被爆したとして昨年3月、市に手帳交付を申請。入市した際に爆心地近くで会った親族の証言などを証拠としたが、市は証言に記憶の食い違いがあるなどとして却下した。これに対し、同地裁は今月14日、証言の信用性を認め、市へ手帳交付を命じた。控訴期限の28日を控え、市の対応が注目されていた。

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