年の瀬の30日。長崎市内の商店街には、おせち料理の食材などを買い求める人々が足を運んだ。新型コロナウイルス感染症や寒波の影響で例年のにぎわいはなく、時折、雪が吹き付ける中、市民らは足早に買い物を済ませ、家路を急いだ。
「いらっしゃいませ」
新大工町の商店街では、マスク越しの声が幾分控えめに響いていた。鮮魚を扱う山芳商店は飛沫(ひまつ)防止のため、客との間にビニールシートを設置。真空パックされたクジラやマグロなどが店先に並んだ。客は次々と訪れたが、店主の山崎伸一さん(55)は「寒波もあり、人通りは間違いなく減っている」と静かに話した。
毎年、正月用の買い物に来るという立山3丁目の会社員、岩永健一さん(37)は「雪が積もったら来られない」からと早めに訪れた。妻や2人の子どもたちと年越しそばや刺し身などを購入。「31日は家でゆっくり過ごします」と笑顔を見せた。
築町の商店街も、人出は少なかった。店を構えて60年を超える蒲鉾(かまぼこ)店宮下商店の店主、今村元彦さん(60)は「コロナで人が街に出て来なくなった」とぼやく。帰省が減り、家族だけで正月を過ごす人たちが増えることを見越して、今年は仕入れの量を減らした。「来年こそは明るい年になってほしい」。願うように話した。