【新日1・4東京ドーム】2冠奪取!飯伏の野望は「50人くらいの会場でIWGP戦」

2冠王者となった飯伏は2本のベルトを高々と掲げた

ついに悲願達成だ。新日本プロレスの年間最大興行「レッスルキングダム15」(4日、東京ドーム)で行われたIWGPヘビー級・IWGPインターコンチネンタルダブル選手権は、挑戦者の飯伏幸太(38)が内藤哲也(38)を破り2冠王者に輝いた。デビューから実に16年半、あこがれだったIWGPヘビー級ベルトを初めて巻き〝ドラマティックドリーム〟が結実。だが決して平坦な道のりではなかった。夢を追いかけ続けたゴールデン☆スターの原点と今後の進むべき道とは――。

同い年で切磋琢磨してきた内藤との頂上決戦は文字通りの死闘となった。2発のカミゴェをカウント2で返された飯伏は、バレンティアを浴びて劣勢に。それでも正調デスティーノを阻止すると、内藤の手をつかんだ状態でジャンピングニー一閃。最後はこの日3発目のカミゴェで激闘に終止符を打った。2004年7月1日、DDTのリングでデビューした男がついに悲願のIWGPヘビー級王座を手にして、業界の頂点に立った。

「届かないものだと思ってたから。あんまりそういうふうに思うタイプではないけど、本当に夢はかなうんだなって」と晴れやかな表情を浮かべた。たぐいまれな才能で華やかなプロレス人生を送ってきたように見られがちだが、デビュー当時のギャラは交通費込みで1試合3000円。生活苦の1年目はたびたび電気、ガス、水道を止められた。頼れる友達もいない。何も食べられない日もあった。デビュー3年目まで続けたアルバイト先では「25歳までにプロレスで生活できなかったら俺、辞めます」とも語っていた。

そんなスタートラインからでもコツコツと努力を続け、好きなプロレスに打ち込み、自分だけの道を切り開いてきた。インディ団体から世界最大団体・米WWEまであらゆるリングを経験し、己の信じたスタイルを貫いた。「逃げない、負けない、諦めない」。回り道も無駄なことも何一つなかったことは、この日の勝利で証明された。

新型コロナウイルス禍で業界が大きな試練を迎えている時代に王者になり、新たな目標も芽生えた。「この1年で一番感じたのはプロレスの可能性。自分ならこの状況でも、新しいプロレスを広げていけるんじゃないかって。広げていきたい」

昨年8月、所属選手が発熱し愛媛・宇和島大会が直前で中止になった。観客を目の前にして帰らなければいけないというつらい経験もしたが、そうした状況下でも全国各地を回ってプロレスの魅力を届けることができた自負がある。

「プロレスは他の競技と比べても、いろんな場所でできるから、そういった意味では可能性が一番あるんじゃないかと。行ったことがないところにも行って、生でプロレスを見せてあげたい。ほんと、50人くらいしかいない村とかでもいいし、そこでIWGP戦をやってもいいです」と目を輝かせる。

常に「プロレスを広める」ということを自らの使命と課してきた。そのためにも、5日東京ドーム大会のジェイ・ホワイト(28)とのV1戦クリアは絶対条件。手にした業界最高峰のベルトを1日で失うわけにはいかない。

「もっともっとプロレスを広めていきたい。2021年は飯伏幸太の年にしたいし、僕だけじゃなくプロレス界全体を盛り上げていきたいです」。夢をかなえたゴールデン☆スターは、今まで以上に多くの人に夢を見せていく。

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