21年度長崎県予算案から<3> DX 環境変化 仕事効率化へ

県内中小企業のDX促進

 「コロナ収束後を見据えて、デジタルトランスフォーメーション(DX)への積極的な対応を進める必要がある」。中村法道知事は16日の新年度予算案の発表会見でこう述べた。
 DX-。長崎県によると、ビジネス環境の激しい変化に対応するため、データとデジタル技術を活用。製品やサービス、業務、組織などを変革し、競争上の優位性を確立すること、という。
 佐世保市を拠点にソフトウエアを開発・販売する大新技研は、通常若手と熟練者の計2人で作業する火力発電所の保守点検を、スマートグラスを掛けた若手1人で作業できるようシステムを開発中。グラス内蔵のカメラを通じて離れた事務所にいる熟練者と現場映像を共有。熟練者がアプリなどを通じて若手に指示を出し、作業効率化と品質向上につなげるという。
 こうした背景には人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)といったデジタル技術が飛躍的に進歩したことがある。さらに労働力人口の減少や働き方改革に加え、昨年からは新型コロナウイルスの感染が拡大。企業はいや応なく効率的に収益を上げる構造への転換を迫られている。
 だが経済産業省が2020年10~11月、地域経済の中心的な担い手になり得る企業を対象に実施したアンケートでは、DXを実践しているのは9%にとどまり、約半数は「よく知らない」「聞いたことがない」と回答。同省は3年前、25年以降に国全体の経済損失が年間最大12兆円に上る可能性があり、「2025年の崖」として警鐘を鳴らした。
 県は新年度事業として、中小企業の経営者ら向けの啓発セミナーを開催。DX導入で課題解決を図る相談窓口を設け、アドバイザーも派遣する。企業間連携で航空機やロボット関連など成長分野に進出する製造業者に対し、DXによる生産性向上や事業拡大を支援。3社以上のグループが5年間で付加価値額20%増の計画を立て、審査を通れば2年間で上限5千万円または3千万円を補助する。女性の就業比率が高い飲食、小売り、宿泊などのサービス産業のDXも促進。処遇改善で女性の県内定着につなげる狙いもある。
 県の担当者は「仕事の効率化のためにはDXは必須。取り組みの成功事例を作り、県内に広げていきたい」と話した。

大新技研が開発を進めているスマートグラス=佐世保市内(同社提供)

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