長崎から来ました

 最も典型的なパターンは「あ、修学旅行で行ったよ。チャンポン食べた」だろうか。司馬遼太郎のファンで幕末マニア、と後で知った友人の第一声は「亀山社中って、今も、跡か何か残ってるの?」だった▲取材で2度訪れたニューヨーク。おお、サセボに行ったことがある、と話してくれたのは反核のデモ行進に参加していた退役軍人の男性で、国連本部での原爆展会場では「Wonderful」と驚かれ、別の人からは「ご家族で原爆に遭われた方は…?」と静かに質問された▲前置きが長くなった。何の話か、というと「長崎から来ました」と自己紹介をした後の反応-である。他県に生まれ育ったことがないから比較の方法はないが、例外なく強めのリアクションが返ってくる▲日本史でも世界史でも教科書に登場する。ヒロシマ・ナガサキと片仮名で書けば、世界に二つしかない特別な場所だ。数多くの文学作品の舞台としても知られる▲そんな「長崎」に対するイメージの多彩な広がりを強く実感するのは長崎を離れた時だ。ふるさとは遠きにありて…。離れて分かる長崎の値打ち▲この春も進学や就職で大勢の若者たちが旅立っていく。いや、あすから新年度、もう旅立った後か。へえ、長崎から…令和の今は、その先にどんな言葉が続くのだろう。(智)


© 株式会社長崎新聞社