三菱香焼工場を売却 大島造船所と契約 2022年度に譲渡完了

大島造船所への売却が決まった三菱重工業長崎造船所香焼工場。中央は建造ドック、右は三菱が所有し続ける修繕ドック

 三菱重工業は30日、長崎造船所香焼工場(長崎市香焼町)を大島造船所(西海市)に売却する契約を締結した。譲渡対象は造船関連エリアの4分の3超を占める。段階的に譲渡し、2022年度内に完了する予定。両社は19年末から交渉していた。

三菱 長崎造船所香焼工場の譲渡エリア

 三菱の発表によると、譲渡するのは国内最大級の建造ドック以南の新造船エリア。門型クレーン3基や岸壁、主要工場棟などが含まれる。売却額は非公表。大島造船所はこれらの活用策について「今回の契約は施設譲渡であり、事業の譲渡ではない。どう活用するかは未定」としている。
 三菱によると、香焼工場に勤務する社員約600人は、グループ企業への配置転換や大島への転籍などを検討している。施設は大型タンカーなどの建造が終了次第、可能な部分から段階的に譲渡する。
 修繕ドックを含む北側の修繕エリアや、南側にある子会社三菱パワー(旧MHPS)の香焼地区は譲渡対象外。修繕エリアでは引き続き三菱が商船のほか、橋などの海洋構造物の修繕に対応する。客船修繕事業を拠点化する計画もある。一方、本工場(長崎市飽の浦町など)では艦艇やフェリーの建造を続ける。
 三菱は「付加価値を高めることができる船舶と海洋エンジニアリングに経営資源を集中することで事業を持続的に発展させていく」とのコメントを出した。
 三菱は中韓メーカーとの競合で、香焼工場で連続建造してきた主力の液化天然ガス(LNG)運搬船の受注がストップ。19年12月に大島との売買交渉を開始した。だが、老朽施設の改修費用負担などの協議に時間を要した上、接岸中だった外国船籍の客船内で新型コロナウイルスの集団感染が発生し、交渉中断を強いられた。

三菱 長崎造船所香焼工場の沿革

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