嘉代子桜、物語とともに全国へ 苗木100本を自治体、学校に提供 長崎・城山小原爆殉難者慰霊会

嘉代子桜の苗木を手にする本田会長=長崎市西海町

 長崎原爆で旧校舎が甚大な被害を受けた長崎市立城山小の同窓会などでつくる「城山小原爆殉難者慰霊会」(本田魂会長)が、長崎原爆で亡くなった林嘉代子さん=当時(15)=をしのぶ同校の「嘉代子桜」の苗木を県内外に広める活動に取り組んでいる。昨年から100本を育てており、希望する自治体や学校などに無償で提供する。
 嘉代子桜は、学徒報国隊員として派遣されていた旧城山国民学校(現・城山小)で被爆死した嘉代子さんをしのび、母津恵さんが1949年に同校に植えた。現在は6本が残っている。
 同校の平和の象徴として毎年花を咲かせているが、近年シロアリ被害に遭い一時は枯れる恐れもあった。そこで、同慰霊会が次世代に嘉代子桜を引き継いでいこうと苗木を広める活動を企画。シロアリ駆除を担当した、長崎市の海老沼造園の海老沼正幸さん(72)も協力した。
 昨年2月、嘉代子桜から100本の枝を採取し、接ぎ木して苗木にした。海老沼造園の敷地内で育てており、一部は花を咲かせた。これまでに西彼時津町の小学校に10本と、長崎原爆の当初の投下目標地だった北九州市に5本を提供。3月29日には、長崎市の田上富久市長に苗木10本と、城山小の被爆の実相などをまとめた被爆75周年記念誌100冊を寄贈した。
 本田会長(77)は「これから先、被爆者は年を取っていなくなる。嘉代子桜の物語ととともに、原爆への関心が広がり、平和の願いが語り継がれてほしい」と願っている。苗木に関する問い合わせは同慰霊会(電080.9804.8327)。

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