コロナ発症10日で転院 長崎医療圏 連携システム稼働 第4波、専用病床逼迫を抑制

 新型コロナウイルスの第4波で患者が急増している長崎市を中心とする長崎医療圏で、専用病床が逼迫(ひっぱく)しないよう医療機関が連携するシステムが稼働を始めた。新規感染者を受け入れる公的病院から、国の退院基準を満たさなくても感染させる力が低下した患者を、発症10日でバックアップ病院に転院させる。同市の新型コロナウイルス対策専門監の片峰茂氏は「公的病院の専用病床に余裕を持たせるのが最大の狙い。これで病床逼迫を抑えたい」と話している。
 長崎医療圏の感染者の治療は、主に長崎大学病院、長崎みなとメディカルセンター、長崎原爆病院、済生会長崎病院の4公的病院が担っている。現在の最大確保病床は140で、約7割を使っている。
 片峰氏によると、昨年暮れから年明けにかけての第3波で、長崎医療圏は専用病床125(当時)のうち約9割が埋まり、「医療崩壊の入り口」だった。その後、第4波の感染者数が第3波ピーク時の2倍になると想定し、専用病床を大幅に拡充する案を検討した。だが、公的病院が大きな役割を果たしている一般急性期医療が崩壊するリスクが高いため、困難と判断。現状の専用病床を最大限活用する体制構築にシフトした。
 国の退院基準は発症から10日経過し、かつ症状軽快後72時間経過した場合。市によると、第3波で約9割の専用病床が埋まった時、退院基準をすべて満たさなくても発症から10日たった患者をバックアップ病院に転院させていれば、病床利用率が約5割まで低下したという。
 このシミュレーション結果を基に、▽公的病院▽発症10日で転院を受け入れる医療機関▽退院基準を満たしたが基礎疾患などで入院管理が必要な回復者のための後方支援医療機関-の流れで対応する体制を整えた。現在、転院受け入れは6医療機関、後方支援は28医療機関。市が構築したシステムで各医療機関の入院や空き病床の情報を共有し、大型連休直前に稼働を始めたという。
 片峰氏は、今後さらに感染が拡大した場合は宿泊施設・自宅療養者の診療体制の強化が求められると指摘。「酸素投与や点滴治療ができるチームを構築できるかどうかがポイントになる」としている。


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