求職者と企業つなぐ 県内初の官民設立「五島市地域づくり事業協同組合」スタート

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指導を受けながらサツマイモの苗を植える尾田さん(右)=五島市、アグリ・コーポレーションの畑

 長崎県五島市のサツマイモ畑。今月10日、初夏の日差しの中、埼玉県からIターンした尾田遼斗さん(26)が1本ずつ丁寧に苗を植えた。初めての畑仕事。「難しいけど、慣れてくると楽しい」。そう言って尾田さんは汗を拭った。
 五島で働きたい人と、五島で働ける人を求めている企業とをつなぐ事業が4月スタートした。県内で初めて官民で設立された「五島市地域づくり事業協同組合」が、農業や観光業など季節によって繁忙期が異なる職場に人材を派遣。派遣される人は、組合の正職員として雇用されるため通年で安定した収入を得られる。求職者と企業が「ウィンウィン」の関係を築けるのが特徴だ。
 尾田さんは同組合の採用第1号。5月に入ってから農業法人「アグリ・コーポレーション」(同市三井楽町)で畑作業をしているが、4月末までは市内の病院で清掃員として働いた。そして、7月からは水産加工の仕事に就く予定だ。
 
◎地方創生の切り札に 若者2人雇用 「いろんな仕事を経験」

 五島市地域づくり事業協同組合に雇用された尾田遼斗さん(26)は埼玉県の農業高校を卒業後、印刷会社に就職。専門学校に入り直してプラスチック工場に再就職したもののの、退職した。「自然豊かな場所に住みたい」。昨年4月、父の実家がある五島市への移住を決めた。
 今年4月の約1カ月間、五島市内の病院で清掃業務に従事。5月からは畑違いの農業の仕事に移った。戸惑いはないのか。尾田さんはこの点について「一つの仕事を長くというより、いろんな仕事を経験していく方が自分には合っているかも」と納得している。
 7月からは別の事業所に移る予定。「それぞれの職場で誰かのために役立つ仕事をしていきたい」と今後を見据える。

五島市地域づくり事業協同組合

●繁忙期に人材供給

 同組合などによると、離島はよく「仕事が少ない」などと言われるが、農業の収穫や加工、製造業などの分野では毎年、同じ時期に多くの人手が必要となり、人材不足に陥る。同市の農業法人「アグリ・コーポレーション」は、6月にかけてサツマイモの苗65万本を植える計画。島内には体力がある20代が少なく、外国人技能実習生などの労働力を頼りにしてきた。繁閑の差が大きい事業者にとって、繁忙期のピンポイントで人材の供給を得られる同組合の事業は魅力的に映る。
 総務省によると、現在、全国で11組合が同様の事業を展開しており、九州では同市と佐賀県みやき町の2カ所。同組合は、尾田さんのように、農業や観光業など季節ごとに繁忙期が異なる業種を組み合わせる「マルチワーク型」と、島内の若者らが複数の仕事を短期間経験した後、地元の企業に就職する「インターンシップ型」の両方に取り組んでいる。

●採用予定枠5人に

 尾田さんとともに同組合に採用された大石明日香さん(25)は、建設業の今村組(同市東浜町1丁目)に派遣され、総務や経理の業務を担当している。高校時代を同市で過ごした後、東京や福岡のコールセンターなどで働いたが、新型コロナ禍で趣味の映画・舞台鑑賞ができなくなり、昨年9月にUターンした。

事務作業に取り組む大石さん=五島市、今村組

 大石さんは「これまでは就職先として建設業を調べることはなかった。自分の希望を無意識に狭めていた」と話す。
 同組合には現在、農業、食品加工、観光、福祉など当初の想定を上回る17企業・団体が参画。正職員は尾田さんと大石さんの2人だが、企業・団体側のニーズに応えるため、本年度の採用予定枠を5人に増やした。
 同組合理事長の清瀧誠司福江商工会議所会頭は「島内の若者の離職や流出を食い止め、UIターン者の増加にもつなげたい。地方創生の切り札としたい」としている。
 問い合わせは同組合(電0959.72.2120)。受け付けは平日午前9時~午後5時。