「コロナで死ぬか、食べられず死ぬか」 追い込まれる貧困層 インドで支援活動の三浦さん語る

三浦さんらの支援を受け、手作りのマスクを配るインド人女性(三浦さん提供)

 「コロナで死ぬか、食べられずに死ぬか」-。インド北部で貧困層の支援活動を続けるNPO法人「アーシャ=アジアの農民と歩む会」(那須塩原市槻沢(つきぬきざわ))の現地責任者三浦照男(みうらてるお)さん(68)が21日、取材に応じ、現地の惨状を明らかにした。新型コロナウイルスの累計感染者数が、2550万人を突破し、米国に次ぐ世界2番目の多さとなった同国。貧困層はコロナの影響で仕事がなくなり、感染しなくとも、生存の危機に直面しているという。

 11日に帰国した三浦さんは現在、感染防止のため、自宅で隔離生活を送っている。取材はオンラインで行った。

 同法人は、インド北部のウッタルプラデシュ州の都市、プラヤーガラージ(アラーハーバード)にある大学が拠点。貧困層が多いとされる村で主に農業分野の技術支援や、女性の社会的地位向上に取り組む。コロナの感染拡大後は、現地女性が作ったマスクを配るなどの活動もしている。

 インドで「第2波」と呼ばれる爆発的な感染が広がったのは3月下旬ごろ。この一因とされるのが、3月中旬までに各地域で行われたヒンドゥー教の伝統祭。各家庭には親族が集まり、ガンジス川は人々でひしめき合った。ほどんどの人が「マスクをしていなかった」という。

 4月下旬から5月上旬、インドでは連日30~40万人の感染者が報告され、農村部まで感染が広がった。拠点の周辺の村では、村民の6割以上が日雇いや季節労働者。「コロナの影響で仕事が無い。土地もないので作物を育てられない。生殺しに近い状況だ」。大学では、知り合いの教授が3人ほどコロナで亡くなった。

 医療機関などは開いている時間が限られ、長蛇の列ができた。医薬品や酸素などは不足しており、村には最新の情報も届かない。「コロナは『かかればかなりの割合で死んでしまう訳がわからない病気』と怖がられている」と説明する。

 死者数が多く、「火葬場は満杯」。市内のガンジス川に遺体20数体が流れていたことがあった。

 感染者や死者数は「政府発表の数字より実際はもっと多い」と推測する。「感染拡大が収まっても、以前のような仕事ができるのかどうかわからない。村の貧困層は袋小路に陥っている」と嘆いた。

オンラインで取材に応じる三浦さん=21日午前

© 株式会社下野新聞社