〈ひと〉にじむ花苗への愛情 大島農業振興公社・藤村眞美さん(35)

 

ベゴニア、サルビア、マリーゴールド。育てた花が多くの人の目を楽しませ、癒やしを与えている。

 大島区牛ケ鼻の大島農業振興公社に勤務し15年。上越市と契約し、市の文化施設や公園花壇に植える花苗約5万ポットの栽培を手掛ける。花壇を通り掛かるたびに「きれいに咲いているな」「ちょっと元気ないな」と気に掛ける。

 専門学校卒業後は事務職を希望していた。しかし就職先がなく、知人に紹介されたのは「畑違い」の農業法人だった。

 浦川原区の実家で米作りの手伝いをしたことはあるものの、農業の知識や経験はゼロ。当初は指示された仕事をこなすだけの日々だった。しかし園芸係を任され、自身で栽培計画を立てることになると「良い苗を育てたい」という意識が芽生えていった。

 花苗の栽培は温度管理が重要。特に3~4月は一番気を抜けない時期。帰宅後も苗の様子が気になり、次の日の作業の段取りを考えたり天気予報を確認したり、「花苗のことで頭がいっぱい」。作業を一人で抱え、ストレスに感じることもあると漏らしつつも、言葉の端々に責任感や花への愛情がにじむ。

 経験を重ねても、植物の生育は毎年違い、こつはつかみきれていないと話す。だが狙い通りに発芽したときは「このやり方で良かった」と自信になり、成長につながっていると感じる。

 予算と契約数に合わせた開花調整、天候や温度管理―。不安や重圧はあるが「いい花苗だね」と言われた時の達成感は大きい。園芸に携わって知った「手を掛け、育つ喜び」を、多くの人に感じてほしい―。自身が思いがけず園芸の世界に飛び込んだように、新たな力を待っている。

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