住吉郵便局元局長 12億4000万円詐取 日本郵便社長「深くおわび」

日本郵便九州支社長崎事務所で開かれた会見で陳謝する豊田支社長(右)ら=長崎市岩川町

 長崎住吉郵便局(長崎市)の男性元局長(68)が架空の郵便貯金で知人らから現金をだまし取ったとされる問題で、日本郵便は2日、社内調査の結果を公表した。知人ら計62人から総額約12億4千万円を詐取していたと認定。衣川和秀社長はオンライン会見で「多大なるご迷惑をお掛けし、深くおわび申し上げる」と陳謝した。
 調査結果によると、元局長は約2億7千万円を元金や利子として返金しており、実損額は約9億7千万円。使い道として▽住宅4軒やアパート1棟などの購入(約1億3800万円)▽ゴルフや飲食費など(約7200万円)▽自家用車21台の購入(約6千万円)▽学費や会費など(約3800万円)が判明した。
 元局長は1996年11月から今年1月まで、知人らに「利率の良い特別な貯金がある」などとうその話を持ち掛け現金を詐取。被害件数168件のうち9割が、93年に廃止された金融商品の証書や写しを現金と引き換えに手渡す手口だった。
 元局長は93年当時、市内の別の局に勤務。証書を処分する総務主任の立場を利用し「使えるかもしれない」と不正に自宅に持ち帰ったと調査に話したという。
 2019年3月に退職し、後任に息子が就いた後も局内で正当な業務を装って詐取を続けた。同社は「家族も含め犯罪そのものに関与した証拠は把握できていない」として局長単独の不正行為とした上で、息子の処分について「局舎を使わせていたのは明らかに問題ある行為。責任を問わなければならない」とした。
 同社は被害者に実損額を補償する方針。5月末時点で44人が方針を了承し、うち12人が既に和解契約書を提出した。同社は実損額を元局長に請求する。
 同社は、県警に刑事告発する方針。県警は詐欺の疑いで捜査を進めている。
 長崎市岩川町の同社九州支社長崎事務所でも同日、会見を開き、豊田康光支社長が調査結果や再発防止策を説明した。


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