王者ホークスに勝ち越し、交流戦2位のDeNA セ・リーグ最下位から覚醒した理由

DeNA・伊藤光【写真:荒川祐史】

殊勲の大和がお立ち台で「田代さんのお陰です」

■DeNA 4ー3 ソフトバンク(3日・横浜)

DeNAは3日、本拠地・横浜スタジアムで行われたソフトバンク戦に4-3で競り勝ち、このカードを2勝1分で勝ち越した。DeNAがソフトバンクに勝ち越したのは2012年以来9年ぶり。交流戦は現在5勝2敗2分で単独2位に付けている。セ・リーグで最下位を“独走”していたDeNAが交流戦突入とともに大きく変わった点がある。

DeNAは交流戦前の段階で、5位・中日に5.5ゲーム差をつけられセ・リーグ最下位を“独走”していた。今も最下位であることに変わりはないが、交流戦ではまるで別のチームのような戦いぶりだ。

まず、打撃部門の指導体制を変えた。今季は開幕から坪井智哉、嶋村一輝両打撃コーチがコンビを組んできたが、交流戦最初のカードの対オリックス3連戦から、66歳の田代富雄巡回打撃コーチが初めてベンチ入り。坪井コーチと組み、嶋村コーチはベンチを外れた。続く対楽天3連戦では逆に、坪井コーチが外れ、田代コーチと嶋村コーチがベンチ入りした。この日のソフトバンク戦は再び、田代コーチと坪井コーチのコンビ。三浦大輔監督は「いろいろな視点でアドバイスしてもらうため」と説明し、「(ベンチ入りの組み合わせは)だいたいカードごとに考えている」と明かしている。

この日、3-3の同点で迎えた7回に左翼フェンス直撃の決勝適時二塁打を放った大和内野手は、お立ち台で「田代さんのお陰です」と語った。田代コーチは現役時代に大洋(現DeNA)の主砲として活躍し、「オバQ」の愛称でも親しまれた。引退後も楽天、巨人などでコーチを務め名伯楽と評され、2019年に1軍チーフ打撃コーチとしてDeNA復帰。今季は巡回打撃コーチに配転されていたが、チームの苦境打開のためにベンチに呼び戻された格好だ。

伊藤光のリードを指揮官は評価「光が相手打者の反応を見ながら、うまくリードしてくれた」

大和は2019年6月19日の日本ハム戦でサヨナラ打を放った際、打席に入る前に田代コーチから「お腹がすいたから早く決めてくれ」と声をかけられていたことを明かし、今年5月27日のオリックス戦の3回に適時二塁打を放つ直前にも、「打ってこい!」と気合を注入されていた経緯がある。この日のお立ち台では「普段からアドバイスをしてくれていますが、今日打席に行く時は…何も言ってくれなかった」と笑わせたが、「ベンチを見たら田代さんが1番喜んでくれていたのでよかった」としみじみ。的確な指導はもちろん、田代コーチの温厚で気さくな人柄がチームに安定感をもたらしているのかもしれない。

一方、同じく交流戦開幕とともに、ベンチを担当していた木塚敦志投手コーチをブルペン担当へ配転。川村丈夫投手コーチをベンチに置いている。「木塚コーチにはブルペン担当コーチの経験もあるし、リリーフ陣を見てほしい」と三浦監督。現役時代、リリーフ一筋に通算490試合に登板した木塚コーチを適所に配置した。

そして、つながりを欠いていた打線に、プロ14年目の伊藤光捕手を「2番・捕手」で起用し刺激を与えた。それまで2番を打つことが多かった大和が8番に下がり、得点圏打率.391(3日時点)の勝負強さを生かせるようになった副産物的効果もある。

伊藤光は今季、ケガもあって出遅れていたが、常時マスクをかぶるようになってリードが安定。三浦監督は「経験豊富で、投手の長所をうまく引き出してくれている」とうなずく。この日、先発した坂本裕哉投手の6回無失点の好投についても、指揮官は「(坂本の)状態自体はめちゃめちゃ良かったわけではないが、バッテリーで変化球を交えながらうまく抑えてくれた。光が相手打者の反応を見ながら、うまくリードしてくれたと思います」と指摘した。

見違えるような快進撃を始めたDeNA。今後もさらに浮上して交流戦優勝をもぎ取り、セ・リーグを混戦に持ち込んでほしいものだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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