きょう開幕

 「有終の美」は、中国の古典「詩経」の一節、〈靡不有初、鮮克有終〉-「初め有らざるは靡(な)し、克(よ)く終わり有るは鮮(すく)なし」から来た言葉だ。何にでも「初め」や「始まり」はあるけれど、最後まで立派にやり遂げるのはなかなか難しい-が原文の意味▲古文の時間のような前置きはともかく…。未知のウイルスが相手の手探りの闘いで「終わり」や「締めくくり」がさまざまに奪われた昨年のことを思い起こしている。県内高校スポーツの祭典、県高総体は、そんな失われた舞台の代表格▲記録や技量や目指す場所は違っても、気持ちの熱さは変わるまい。勝って泣き、負けて泣く。そのどちらもできずに競技場やコートを去る宙ぶらりんの悔しさや喪失感はどれほどだったか▲2年ぶりの県高総体がきょう開幕する。今年の大会スローガンは「想いを、夢をぶつけろ! 待望のこの舞台で今」-いつもの年よりちょっと長く感じるのは、きっと2年分の気持ちが詰め込まれているから▲32競技に約1万300人が参加して、熱戦は11日まで7日間。ありきたりな激励は不要だろう。最後の最後まで全力で、それぞれの「終わりある美」へ▲隣の欄に目を移すと、このシーズンには珍しく「晴れ」のマークが案外頑張っている。そんな巡り合わせが素朴にうれしい。(智)

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