全米女子OP優勝で笹生の二重国籍がクローズアップ 日本とフィリピンで“争奪戦”も

衝撃のメジャー初Vを果たした笹生は日比両国の期待を背負っている(ロイター=USA TODAY)

女子ゴルフの笹生優花(19=ICTSI)が海外メジャー「全米女子オープン」を大会最年少で制し、世界の注目を集めている。日本ゴルフ界では4月の「マスターズ」を制した松山秀樹(29=LEXUS)に続く偉業達成で、日本勢の女子では3人目のメジャー制覇。主戦場を米ツアーへ移す今後はさらなる飛躍が期待されるが、日本人の父とフィリピン人の母を持ち、現在は二重国籍の笹生ならではの“綱引き”も行われようとしている。どういうことか?

6日(日本時間7日)の最終日、勝負は通算4アンダーで並んだ畑岡奈紗(22=アビームコンサルティング)と男女を通じて海外メジャー初となる日本人対決のプレーオフに持ち込まれた。3ホール目に笹生が2メートルのバーディーパットを決めて大会最年少タイ記録(19歳11か月17日)で頂点に立った。

1977年「全米女子プロ選手権」の樋口久子氏(75=JLPGA顧問)、2019年「AIG全英女子オープン」の渋野日向子(22=サントリー)に続く日本勢女子のメジャー制覇。これで5年の米ツアー出場権を獲得し、かねて参戦を目指していた舞台に挑戦する。笹生は「夢は世界一になることと、『全米女子オープン』で勝つことだった。でも、本当に今週できるなんて!」と喜びとともに驚きの表情も見せた。

一躍スター選手の仲間入りを果たし、さらなるメジャー制覇の可能性が膨らむ一方、新型コロナウイルス禍で開催の是非が問われているものの、東京五輪での活躍も期待される。

世界ランキングは前週の40位から9位にジャンプアップし、日本勢トップ。日本代表として今度は五輪で同10位の畑岡と金メダル争いをしてもらいところだが、笹生は日本とフィリピンの二重国籍を持つ。

ジュニア時代から国際大会ではフィリピンの選手として活躍しており、東京五輪についても本人はフィリピンからの出場を明言している。

万が一、心変わりしたとしても、すでに個人、団体の2つの金メダルを獲得した2018年の「アジア大会」(インドネシア)にフィリピン代表として出場。五輪憲章には複数の国籍を持つ選手は代表となる国を選べるが、変更はできないという規定があり、今から東京五輪の日本代表になるのは不可能だ。

問題は東京五輪だけにとどまらない。日本の国籍法は、22歳になるまでに二重国籍を解消することを求めている。笹生はいずれ日本国籍を選択する見込みだが、フィリピン側も国民的ヒロインを手放したいとは思わないだろう。

ツアー関係者は「日本国籍を選ぶときに、本人たちの考えと別にフィリピン国籍を求める動きが出てくるかもしれない」と指摘する。

二重国籍を解消した後の24年パリ五輪、28年ロス五輪には日本代表の可能性もある。フィリピンは過去の五輪で金メダルを獲得したことがなく、有力候補の笹生に“残留”のラブコールを送っても不思議はない。

やはり自国の選手を応援したいのが人情というもの。両国にとって初となる笹生の「全米女子オープン」優勝はうれしいニュースだが、いずれ選択を迫られる日本の法律を前に“争奪戦”となる可能性も。もちろんそれは、今後も日比両国民の期待を背負っていかなければならない“証し”と言えよう。

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