扉を開くには

 梅雨の晴れ間の昼下がり、長崎市営のコートでご年配の数人がテニスを楽しんでいた。久しぶりにいい汗かいたね…。きのうは仲間内で会話も弾んだとお察しする▲市のホームページを開けば、観光、文化、スポーツ施設、公民館のほとんどが8日に「開場」「開館」とある。固く閉じた扉がようやく開き、いくらか開放感を覚えた人も多いだろう。継続中だった長崎市への県独自の緊急事態宣言が解除された▲飲食店はいつもの営業時間になり、街に明かりが戻りつつある。客足がいつ元に戻るのか見通せないが、店を営む人、働く人は、ひとまず胸をなで下ろしたに違いない▲「忍の一字で頑張ってきたけれど、心が折れそう」と、新型コロナが急拡大した4月末、グラバー園に近い土産品店の人が語っていた。昨年春に店を閉め、今年もまた、稼ぎ時の大型連休なのに客はまばらだった。折れそうな心に当てる添え木はあるだろうか▲再開の「開」の文字に心は少し軽くなるが、これまで重ねた「閉」の重さに耐えかねる人も数多い。コロナ拡大に油断はできず、「開」が続くかどうかも読めない▲皆が県外との行き来を控える、家族以外との会食を控える。そうやって社会がそろりそろりと扉を開き、願わくばもう閉じませんよう。あとひと頑張り、と心したい。(徹)

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