交流戦好調DeNA三浦監督に求められる“やりくり” チームの「生命線」に生じる異変

DeNAのタイラー・オースティン【写真:荒川祐史】

初勝利目前の中川を4点リードで降板させる“非情采配”も実らず西武と引き分け

■西武 8ー8 DeNA(9日・メットライフ)

セ・リーグ最下位ながら交流戦優勝を狙える位置に付けているDeNAが9日、敵地・メットライフドームで行われた西武戦で6点リードを追いつかれ8-8の痛恨ドロー。この日は交流戦首位だった楽天が中日に敗れ、DeNAは勝っていれば中日と並んで首位に浮上できたが、0.5ゲーム差の2位にとどまった。

4回表の攻撃を終えた時点で8-2と大量リード。先発の21歳右腕・中川虎大投手には、プロ4年目にして初勝利がかかっていた。

その裏、中川は呉念庭に右翼線二塁打、愛斗に左翼線適時二塁打、山田にも右前適時打を許して点差は4点に。球数も93球に達した。すると三浦大輔監督は、勝利投手の権利を得るまであと1イニングに迫っていた中川を諦め、4点リードの5回から左腕・砂田にスイッチした。

昨季2軍監督として中川を手塩にかけて育てた三浦監督にとっては「ストライクとボールがはっきりし過ぎていた。もちろん初勝利ということも考えたが、それ以上にチームで戦っているので」という苦渋の決断。しかし、非情に徹した交代も実らなかった。

2番手・砂田、3番手・三上が打たれ2点差。7回から満を持して投入した最速160キロ左腕エドウィン・エスコバーも相手に傾いた流れを止められない。先頭の森を四球で歩かせ、2死後、メヒアに初球の156キロ速球を左翼線適時二塁打され1点差。続く呉にも、真ん中に入った156キロを中前に弾き返され、とうとう追いつかれた。

エスコバーは6月に入ってから、3日のソフトバンク戦で松田に3ランを食らい1回3失点。5日のロッテ戦でも加藤から被弾し2/3回2失点。5月末に1.45だった防御率は、9日現在3.47まで悪化している。

エスコバーは1回2失点&12号弾のオースティンは途中交代

7回をエスコバー、8回を山崎康晃投手、9回を守護神・三嶋一輝投手が担う勝利の方程式はDeNAの“生命線”で、基本的に替えは利かない。三浦監督も「(エスコバーは)疲れが出ているのは確かだが、なんとか今いるメンバーで戦っていくしかない。頑張ってもらうしかない」と言う。

エスコバーは、2019年にリーグ最多の74試合に登板するなど、昨季まで3年連続50試合以上に登板。コロナ禍で来日が遅れた今季も、初登板した4月21日以降のチーム39試合中、約60%の23試合で投げている。山崎に教わった「男は黙って投げるだけ」をキャッチフレーズにしているタフネス左腕にも疲れが出ているようだ。三浦監督は今後、“方程式”の再構築を迫られるかもしれない。

一方、攻撃の要にも不吉な兆しが。タイラー・オースティン外野手は1回、バックスクリーン左へ豪快な12号2ランを放った。ところが4回、四球で出塁し、宮崎の左翼線二塁打で一塁から長駆ホームインした際、左ハムストリングに違和感を訴え、6回の打席では代打を送られ交代した。

指揮官は「病院に行く予定はない」と軽症を強調。しかし、オースティンは6日のロッテ戦でもファウルを打った際、腰に手を当て痛みに表情を歪めるシーンがあった。8日の西武戦からは高い守備力を誇るにも関わらずDHで出場している。

コロナ禍で1軍登録が開幕3週間後の4月13日にずれ込みながら、チーム最多の12本塁打、打率.331をマークしているオースティンが万が一離脱するようなことがあれば、衝撃は計り知れない。開幕から最下位を“独走”していたDeNAが息を吹き返したのは、オースティンとソトが合流し調子を上げてからなのだ。

交流戦に入った途端、攻勢に転じたDeNAだが、就任1年目の指揮官は舞台裏で難しいやりくりを迫られている。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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