ソフトバンク・石川 自らを奮い立たせる「新たなモチベーション」とは

8回1失点も援護なく敗戦投手となった石川(右)

8回1失点の敗戦投手を誰も責めることはない。ソフトバンクの石川柊太投手(29)が11日のヤクルト戦(ペイペイ)で今季5敗目を喫した。

2回に村上に決勝ソロを献上。防御率2点台ながら、黒星が2つ先行する。「勝ちがつかなくて同情がほしいわけじゃない」。今季、栄えある開幕投手を担った男には、先発陣の柱としての矜持が芽生えている。

育成出身の開幕投手には、戸惑いがあった。2013年のドラフトで育成1位指名され、16年に支配下登録。入団以来、現状に満足せず「なにくそ」という思いで、はい上がってきた。甲斐や千賀ら同様、ド根性精神と立身出世の精神は人一倍だ。「育成で入って期待もされていない状態でやってきた。『どうせ期待してねぇんだろ?』ってのが原動力だった」。いい意味で予想を裏切り続け、それがモチベーションだった。

だが、この春、4年連続日本一チームの開幕投手を託された。「いざ期待されると…真逆なんで戸惑いを感じたり、重圧を感じた」。これまでにない境遇に「ハードルのつけ方が分からなくなった」。開幕から2か月以上“心のガソリン”が満たされない状態が続いていた。

ようやく隙間を埋める“なにくそ要素”を見つけたのは最近だった。盟友・千賀の「代役としての開幕投手」という自覚が強かった中で、周囲から「こんなもんか」と客観的評価を下されることに「すごく悔しい」という感情が自然と芽生えた。「同情されると情けないとか、こんなもんだろ、というのが悔しい。新しいモチベーションが湧いてきた」と目を輝かせる。

足りなかった何かを見つけた石川。独特の感性を持った29歳が、またギラギラし始めた。

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