小林亜星さん

 〈貫太郎のモデルは、私の父向田敏雄である。よくどなり、よく殴り、5年前に亡くなった。お線香代わりにちょっぴり「立派な男」に仕立て直して…〉-そんな思いを込めていたからか、脚本家は当初、配役への強い難色を示した▲俳優としての代表作「寺内貫太郎一家」。怒りっぽくて涙もろい、愛すべき日本のお父さん、西城秀樹さんとの取っ組み合いはブラウン管が狭く見えたが、主人公のキャスティングにはちょっとした曲折があった▲記憶違いでなければ、向田邦子さんの著作で読んだ。イメージが違うわ、と不満顔を隠さなかった本人が後に舞台裏を明かしているのだから、ドラマが大成功だった何よりの証拠だろう▲♪おいしい顔ってどんな顔、毛糸洗いに自信が持てます、あなたとコンビに…。本業の方は迷いに迷って“へえ、これもそうだったのか感”の強い三つを選んでみた。どうぞメロディー付きでお読みください▲「誰もが口ずさんだ」が作曲家の訃報に添える常套句(じょうとうく)だとしたら、その極めつけの人だ。生活の現場で耳になじんだあの曲この曲。作曲家の小林亜星さんが亡くなった▲「巨星」の言葉がよく似合う。県内では〈木の香りの新しい家ができたら、2階の部屋をあげよう〉と愛娘の寝顔に歌う住宅メーカーのCM曲も懐かしい。(智)

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