特別天然記念物タンチョウを射殺 農家男性が訴えた害獣被害「釈然としない思いが募っていた」

特別天然記念物に指定されているタンチョウ

北海道池田町で今月、国の特別天然記念物タンチョウが有害鳥獣駆除に使用する空気銃で撃たれて死に、道警が文化財保護法違反や銃刀法違反などの疑いで発砲した農家の男性を任意で調べていることが15日、分かった。男性は北海道公安委員会の許可を得て、有害鳥獣駆除目的で空気銃を所持していた。

捜査関係者によると、男性は5日午前、タマネギ畑に侵入しようとしたタンチョウを威嚇するため5発発砲した後、近くで倒れているのを発見して警察に連絡した。2発が命中していた。

男性は「長年タンチョウに畑を荒らされて困っており、釈然としない思いが募っていた」「天然記念物として大事に保護されているが、我々にとっては害獣でしかない」と話し、「5年ほど前から頻出していた」と訴えている。年間100万円以上の損害が出たこともあるという。保護の対象である天然記念物のタンチョウが射殺されるのは予想外の事態だが、その端緒だったかもしれない変化が6年前に起こっていた。

動物ジャーナリストは「日本でタンチョウは絶滅したと見られていたが、大正末期に再発見されてから、厳しい冬季に給餌をすることで奇跡的に個体数が回復。環境省によれば2018年時点で国内に約1650羽が生息している。しかし、給餌場に多くの個体が集まると感染症リスクが高まることから、環境省は15年から冬季の給餌量を減らして、タンチョウが新天地を求めて分散するよう促している」と語る。

環境省が6年前からタンチョウの生息地を分散させようとしていたことと、男性の畑にタンチョウが頻出するようになったことに因果関係があるかは不明だ。しかし、男性にとっては、こうした偶然の一致も腹に据えかねる問題だったのかもしれない。とはいえ、どんな理由があったとしても特別天然記念物を殺すことは法律違反だ。道警は今後、種の保存法違反や鳥獣保護法違反の適用も視野に入れて捜査していくという。

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