「シーズン最後の1か月のように」 ロッテ井口監督が重視する“五輪前ダッシュ”

ロッテ・井口資仁監督【写真:荒川祐史】

ロッテ井口監督の飾らぬ想いを届ける月連載・第5回

プロ野球は3週間続いた交流戦が幕を下ろし、18日から再び同一リーグでの対戦が始まる。2年ぶりの開催となった今季は、オリックスが阪神を1.5ゲーム差でかわして初優勝。一方、2005年のスタートから交流戦はパ・リーグの独壇場だったが、セ・リーグ球団が大健闘を見せ、2009年以来12年ぶりに勝ち越しを決めた。

井口資仁監督率いるロッテは、惜しくも8勝9敗1分けと交流戦を負け越した。3カード目の敵地・中日3連戦で連日接戦を展開。1点差ゲームを2試合落とし、1試合は引き分けと、白星を飾れなかったことが響いた。また、ここへ来て投手陣が続けざまに離脱。先発ローテの軸として期待されていたベテラン石川歩投手は右肘関節クリーニング手術を受け、全治3~4か月の見込み。勝ちパターンを繋ぐハーマン投手が腰痛で離脱、唐川侑己投手も状態を落としたことが響いた。

もちろん、プラス要素もある。打線は変わらずマーティン外野手とレアード内野手のバットが好調で、1番・荻野貴司外野手、3番・中村奨吾内野手も打率3割超え。角中勝也外野手も本塁打こそ出てはいないが、打率3割&出塁率4割を超える活躍ぶりだ。

パ・リーグでの順位はオリックスに追い抜かれて4位となったが、首位・楽天から5位・西武まで4ゲーム差という超混戦模様。18日から再開するリーグ内での争いに、井口監督はどんな想いで臨むのか。連載シリーズ第5回は、交流戦で得た刺激、東京オリンピック開催前までの期間、1軍デビューを果たした佐々木朗希投手などについて語る。【取材・構成 / 佐藤直子】

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2年ぶりの交流戦が終了しました。セ・リーグ6球団と18試合を戦い、勝ち越しはならず。結果には全く満足していませんが、大いに刺激を受ける期間だったと思います。

交流戦と言えば、これまでパ・リーグが強いイメージがあったと思います。ですが、今年のセ・リーグは勢いのあるチームが多かった。その中でマリーンズは石川が手術を受け、ハーマンが抜け、唐川も状態がよくなかったため、後半は投手陣が戦力ダウンしてしまいました。野手でもエチェバリアの怪我もあり、苦戦を強いられてしまいました。

目を見張ったセ若手打者の勢い「安田にはいい刺激になったのでは」

久しぶりに公式戦でセ・リーグ球団と対戦し、今まで見た中でも今年はどのチームも打線に活気があると感じました。やはりタイガースだったらルーキーの佐藤輝明選手。ヤクルトでは村上宗隆選手にも1発打たれましたし、ジャイアンツの岡本和真選手には初戦1本、2戦目には2本もスタンドに運ばれた。主砲にしっかり打たれると、なかなか試合には勝てません。

同年代の活躍を目の当たりにして、安田(尚憲)にはいい刺激になったのではないかと思います。一時期調子を落としていましたが、ここへ来て上向いているところなので、自分も負けていられないという気持ちが沸いてきたのではないかと思います。

春先の練習試合やオープン戦を除けば、セ・リーグの試合や選手は実際に見ることができません。今回の交流戦を終え、改めていい選手がでてきたなと思いますし、他にも手本になる選手がたくさんいる。他の選手たちにとっても、またチームとしてもいい刺激をもらった交流戦期間になったと思います。

投手陣では、5月に(佐々木)朗希が1軍デビューし、ここまで3試合を投げました。毎試合、球数やイニングを少しずつ伸ばしながら、投球内容やマウンド捌きなど成長している様子が皆さんにも伝わっているのではないでしょうか。本人も自信を深めながらウイニングショットを投げている。しっかり調整しながらマウンドに上がることができています。現時点では10日間の調整期間で進んでいますが、オールスター以降はどのくらいの間隔で投げられるのか、今から期待するところですね。

ここまで前半戦は接戦が多かったので、中継ぎに負担が掛かってしまいました。その結果として、ハーマンや唐川の不調に繋がってしまった部分は否めません。交流戦後にトレードでDeNAから国吉佑樹投手を獲得しましたが、ブルペンの厚みを増すためにも、先発からの配置転換も考えるなど柔軟に対応していく予定です。

5月には、ドラフト1位左腕の鈴木(昭汰)に一時期、中継ぎを経験させました。長いイニングを好投してくれるのですが、1イニングだけボールが高く浮き、失点が重なってしまうなど、もったいない投球が多かった。これは若い投手にはよくあることなので、中継ぎで短いイニングの中でしっかりボールとストライクを投げ切るピッチングを意識してもらいたい意図がありました。もちろん、これから先発で起用していく予定です。無駄をなくせばもっともっと勝てるピッチャーだと感じています。

五輪前の約1か月間に猛ダッシュ「あまり先を見ずに、まずはオールスターまで」

打線はマーティンとレアードの両外国人がしっかり機能してくれました。荻野、中村奨、角中も調子がいい。盗塁数、本塁打数ともにリーグ上位にいますし、去年はほとんどいなかった3割打者もいる。ここからの強化ポイントを挙げるとすれば、6番以降の下位打線ですね。ここを繋げば、走者を溜めて好調の上位へ回せる。そこが課題でしょう。

ただ、交流戦では先制点を許して、追いかける展開がほとんどでした。7回以降には諦めずに点を取れているので、そこは自信を持ちつつ、初回から攻勢を仕掛けられれば、もっと楽な試合展開に持っていけるはずです。去年からの課題ではありますが、マリーンズの打線は初対戦のピッチャーに苦戦する傾向があります。どちらかというと追い込まれてから勝負する打者が多い上に、交流戦では初対戦のピッチャーが多く後手後手に回ってしまった。ここはチームの課題として、ファーストストライクに対して積極的な姿勢を持ち続けるよう意識付けしたいと思います。

交流戦と言えば、甲子園で開催された阪神戦では、鳥谷敬が2年ぶりの古巣でタイムリーヒットを打ちました。観客数が限られてはいましたが、熱い応援の中、タイムリーを打てるのはさすが。両チームのファンが期待していたと思いますし、それにしっかり応えてくれました。

18日からはパ・リーグでの戦いが再開します。今回は7月23日に開幕予定の東京オリンピックまで約1か月という期間。オリンピックで一時中断するので、そこまではシーズ最後の1か月くらいの感覚で、全力で戦い抜きたいと思います。あまり先を見ずに、まずはオールスターまで。

ここからは蒸し暑さとの戦いにもなりますが、室内練習場をうまく使いながら、質の高い練習を意識したいと思います。去年は室内練習を増やした結果、振り込む量が減り、終盤に打線が失速してしまいました。今年は質と量のバランスを考えながら、しっかり指導していきたいと思います。

6月を迎え、選手たちは疲れが溜まり始める時期です。なので、18日までの小休止でうまく疲れを取りながら鋭気を養い、西武3連戦からいい再スタートを切って前半戦を戦い抜きます。(Full-Count編集部)

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