「長期投資のキホン」投資はどのくらいの期間続けるべき?

老後資金や教育資金など、いつか使うためのお金をできるだけ増やしたい。そんな理由で株式や投資信託などに興味を持つ人も多いでしょう。でも、何から初めていいのか分からず、なかなか投資をスタートできないこともあるようです。

そこで投資のプロであるウェルスナビ執行役員リサーチ&クオンツの牛山史朗さんに、3回にわたって「投資の基本のキ」を伺います。

1回目は「投資はどのくらいの期間続けるべき?」という疑問に答えてもらいました。


銀行に100万円預けても利息は10円程度。投資でしっかり増やすべき

「せっかく貯めたお金を一円も減らしたくない」「損をするのが怖い」。そんな気持ちで、投資に二の足を踏んでしまう人もいるかもしれません。でも、ただ貯蓄しているだけで、本当に「損をしない」と言えるのでしょうか。牛山さんは「現在の金融機関の金利の低さに目を向けてほしい」と話します。

「今は普通預金が0.001%程度。100万円を1年間預けていても、利息が10円付く程度です。そのためATMで一度でも時間外に引き出したり、振込を行ったりしたら、一気に利息以上を支払ってしまうことになります。」

すぐ使わないなら、資産運用する。それが結果的に、あなたの貯蓄を減らさない ことにつながるかもしれません。ただ、結果を出したいからと言って、焦りは禁物。「将来に向けた投資 はある程度、長期間かけて行うと考えて」と牛山さんは言います。

その理由は、大きく分けて2つ。1つ目は長期で考えることで、短期的な値上がり、値下がりの動きが打ち消し合い、投資のリターン、つまり収益が安定すること。 2つ目は投資で得たリターンを引き出さずにそのまま元手とすることで、更なるリターンが生み出されることです。これは「複利効果」と呼ばれ、長期投資の大きなメリットとして挙げられています。

牛山さんが示す長期投資の期間は「10年以上」。10年と聞くと先が長いような気がしますが、結婚や子どもの誕生をきっかけに始めれば、日々の生活に追われてあっという間に時が経ち、いつの間にか教育資金や家の頭金が貯まっているということも。金利が低いこの時代。すぐに使わないお金なら、思い切って長期投資して少しでも資産を増やしたいものです。

長期投資のメリットは?

(1) 短期的な値上がり、値下がりが打ち消し合い、リターンが安定する

(2) 利益を引き出さずに投資し続けることで、複利効果が得られる

大儲けを目指すよりも、年間4〜6%のリターンを目安に

先ほど、「銀行に100万円預けても利息は10円程度」と説明しました。では投資した場合、リターンはどれ程度見込めるのでしょうか。

牛山さんによると「年間4〜6%が目安」。つまり、100万円預けていれば4〜6万円の利益が出るということ。ですが、これは「毎年必ず4〜6万円をプラスにする」という意味ではありません。資産運用のための金融商品や、そうした商品を運用する会社をファンドと呼びますが、ここでは世界最大級のファンドを例に挙げて解説します。

下の図は、運用する資産が100兆円以上の「ノルウェー政府年金基金」。1998年にスタートし、約500人の専門家が運用に係っています。しかし、運用開始から2020年までの23年間のうち、リーマンショックが起きた2008年などを含めて5年間はマイナスが出ています。

「1年ではなく、長期のリターンに注目してください。23年間の平均を見ると、年6.3%のプラスになっています。23年間累積で見ると、運用資産が約4倍になる計算です」

当該データよりウェルスナビ作成

当該データよりウェルスナビ作成

世界最大級のファンドでも、長期間運用して得られるリターンは年間4〜6%程度。そのため、「他のファンドを選ぶ際も、このリターンを目安にすべき」と牛山さん。

「裏を返せば、これ以上のリターンが必ず出ると断言しているファンドは疑ったほうがいいでしょう。もし毎年必ず50%とうたっているものがあれば、一気に大損をしてしまう可能性も考えるべきです」

初心者は何をすればよい?

考えれば考えるほど、複雑になって手を出しにくい……そんな気持ちになってしまった人も、少なからずいるでしょう。「マネーリテラシーを高めるには、少額から実際に投資を始めることが一番」と牛山さんはアドバイスします。

「楽器などは練習すればするほど上達するかもしれませんが、投資は必ずしも勉強すればするほど儲かるわけではありません。プロ並みに金融知識を身につけてから、と考えなくても大丈夫。全ての方が企業の財務諸表を読める必要はありません。投資をすると、自分の資産がなぜ今増えたのか、減ったのかと真剣に考えるようになります。株価が上がった背景に良いニュースがあったと感じられるようになり、どんどん経済が自分ごとになっていくと思います」

次回は「いくらまで投資していいの?」という、投資にかけるお金の目安について伺います。

「長期・積立・分散」の資産運用を全自動で行う「ウェルスナビ」。執行役員リサーチ&クオンツの牛山史朗さん

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