高額所得者ほど「老後貧乏」のリスクが高い?破産に陥りやすい理由とは

2019年に「老後資金2,000万円問題」がありました。では、2,000万円を用意しておけば安心なのか?というと必ずしもそうとは言えません。とくに現役時代に高額所得者だった人は、もっとも注意が必要なのです。高額所得者ほど、老後貧乏になりやすいことを知っていますか?

では、高額所得者の人は、どのくらいの老後資金を用意すればいいでしょうか?

たとえば、6,000万円ぐらいの資金を用意できたとします。これで老後は安泰になると思っていたら間違いです。もしかすると、老後貧乏への道をまっしぐらに進んでいることになるかも知れません。

逆に、現役時代に所得がそれほど多くなかった人の方が老後破綻になりにくいってこともあるのです。

どうして、こんなことがあるのでしょうか?それは老後生活の「収支バランス」に鍵があります。理由を解説していきましょう。


6000万円の老後資金が82歳でマイナスになる!

では、なぜ高額所得者なのに老後貧乏の危険性があるのか、例を出して説明をしましょう。

現役時代の年収1,500万円のAさん。月額にすると収入は125万円で、支出は月額平均80万円です。それでも余裕で暮らせるので、たまに海外旅行を楽しみしています。

老後資金としては、退職金を含めて6,000万円を準備しました。これだけあれば十分に足りると考えています。

Aさんは、65歳で退職をして年金暮らしになりました。公的年金20万円と企業年金15万円(15年有期年金)の月額合計35万円の年金暮らしになります。月の支出は、現役時代と同じというわけにはいかないと思い、2割を節約して、65万円で暮らしています。

では、Aさんの老後生活というのは、どうなるのでしょうか?簡単なシミュレーションをしてみます。

収入(年金)月額35万円−支出月額65万円=−30万円
−30万円×12ヵ月=−360万円

年間360万円の赤字になります。それを老後資金で取り崩すことになります。
6,000万円÷360万円=約17年

約17年後、つまり約82歳になる時には、老後資金が底をついてしまうという計算になります。

さらに、お気づきかも知れませんが、企業年金は15年の有期年金です。80歳以降は公的年金だけの月額20万円になるので、82歳になった時点でマイナスの生活に陥るのです。

さて、Aさんは82歳からの生活というのは、月額20万円だけで生活することになります。そこで、支出を抑えることができない場合は、本当に老後破綻の道に突き進むことになってしまいます。

年収が低い人は、老後資金が少なくてもなんとかなる?

高額所得者というのはどうしても支出が多くなりがちです。その生活費を半分にするのは、なかなか難しいことです。しかし現役時代と同じ支出をそのまま続けてしまうと、破綻してしまう可能性が高いのです。

所得がそれほど多くない人は、支出を削る部分は少ないかもしれませんが、年金の収入に対して、支出を合わせやすい場合が多いのです。年間の赤字額が少ないとそれだけ老後資金も少なくてすみ、老後破綻にはなりにくいのです。

たとえば、先ほど例に出した高額所得者だったAさんの場合は、年間360万円(月額30万円)の赤字なので、95歳までの老後資金の総額は1億800万円が必要になります。もし支出を、年間の赤字額が60万円(月額5万円)までおさえられれば、95歳までの老後資金の総額は1,800万円です。老後資金が少なくても大丈夫になります。

長生きの時代に対応している老後資金とは

これでわかるように、老後資金の「金額」がいくら必要なのか、という話はあまり意味がないのです。じつは、老後資金の金額よりも、もっとも重要なのは老後生活の「収支バランス」なのです。

極論をいうと収支のバランスがあっていれば、老後資金はなくても大丈夫と言えます(もちろん、介護や認知症トラブルに備える余裕資金は必須です)。

また、収支のバランスがあっていると、老後資金がどんどん減っていくという恐怖を持たなくてもいいので、気持ち的にもラクになります。さらに、いったいいつまで生きるのかわからない長寿時代にも対応できる方法です。

収支のバランスを合わせる方法とは

では、収支のバランスをどうすれば合わせることができるのでしょうか?

2つの方法を提案します。

ひとつはムダな支出を見直すこと。とくに支出が多い固定費を見直すとこで簡単に節約することができます。たとえば、生命保険や、携帯電話料金の見直しです。住宅費の見直しも考えてもいいでしょう。例えば年金暮らしになっても住宅ローンが残っている場合には、退職金などを使って返済するようにしてはどうでしょうか?

もうひとつは収入を増やす方法です。たとえば、年金を増やす方法があります。「年金を増やすなんて、ムリでしょう」なんて思ってはいませんか?じつは、増やすことができるのです。

もし、65歳以降も会社で働くとすると70歳までは厚生年金に加入することができるので、その分の年金が上乗せされます。

また、年金の繰下げ受給をすると年金を増やすことができます。繰下げ受給は年8.4%の増額になります。70歳まで繰り下げると42%の増額で、75歳まで繰り下げると84%の増額になります(75歳までの繰下げ受給は2022年4月より)。

これらのことを実行することで、老後生活の収支バランスをとることができるようなります。定年を向かえる人は、老後生活の収支バランスを考えながらシミュレーションをしてみましょう。

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