つみたてNISA・iDeCo・企業型DC…途中で積立をやめた投資信託は解約した方がいい?

「こっちのほうが値上がりしそう」「コストが安い商品が出た」などという理由で、積立投資で購入している投資信託を変更したことはありませんか。そんなとき、これまで購入してきた商品は、どうすればいいのでしょうか。このまま保有すべきでしょうか? それとも解約したほうがいいのでしょうか?

今回は指針となるような考え方をお伝えします。


目次

・【大前提】投資信託は持っているだけで手数料がかかる
・アクティブファンドの積立を辞めた場合はどうすべきか
・つみたてNISAで買っている場合はどうする?
・iDeCoや企業型DCで買っている場合はどうする?


【大前提】投資信託は持っているだけで手数料がかかる

大前提として投資信託には「信託報酬」という手数料があることを押さえておきましょう。信託報酬は、金融機関のプロに投資信託を運用してもらうために支払う経費のような手数料。商品を持っている間、ずっとかかります。

ただ、信託報酬は習い事の月謝のように、別途支払う手数料ではありません。たとえば、「信託報酬年1%」とある場合、この年率1%が日割りされて、投資信託の財産(信託財産)から毎日自動的に差し引かれていきます。ですから、金融機関Webサイトのマイページで資産情報を見ても手数料を支払っていないように見えますが、実は手数料を払っているのです。この信託報酬は、運用の成果がよかろうが悪かろうが関係なしに、淡々と引かれていきます。

仮に信託報酬が年1%のファンドを100万円分保有していれば、年間で約1万円の手数料を支払うことに。20年間ならば、じつに約20万円支払うことになるのです。

このことを踏まえて、投資信託の積立をやめた場合の対処を考えていきます。

アクティブファンドの積立を辞めた場合はどうすべきか

アクティブファンドは、目標とする指標(ベンチマーク)を上回ることや、ベンチマークを定めずに利益を追求することを目指す投資信託です。インデックスファンドやバランスファンドといった、他のタイプの投資信託に比べると値動きのリスクは大きくなりがちです。

しかし、仮に多少値動きがあったとしても、そもそも10年、20年と投資すると決めて買ったのであれば、基本的に投資を続けるべきでしょう。そもそも投資信託の商品の性質上、株やFXと異なり短期間で売買するのに適した商品ではありません。

投資信託は「長期」「積立」「分散」という、王道の投資のしくみでお金を増やすものだからです。長い期間、お金をコツコツ積み立てて、投資信託を使って値動きの異なるさまざまな資産に自分のお金を分散することで、お金は堅実に増えていきますし、利益を再投資することで新たな利益を生み出す複利の効果も得られます。

また、長期間続けることで、「ドルコスト平均法」を生かすこともできます。ドルコスト平均法は、商品の値動きにかかわらず定期的に一定額ずつ買い付ける投資の方法です。こうすると、商品の価格が安いときにはたくさん買い、逆に高いときには少しだけ買うことになるため、平均購入単価が抑えられるのです。平均購入価格が下がっていけば、少しでも値上がりした際に利益を出しやすくなります。

ただし、必ずすべてのアクティブファンドで投資を続けるべきかといえば、そうではありません。

「テーマ型」と呼ばれる商品があります。テーマ型は、「AI」「バイオ」「ロボット」など、世の中の流行や興味関心に関連する投資先を組み入れた商品です。確かに、未来を感じるかもしれませんが、市場で注目を浴びるテーマは時間とともに変化していきます。そして、旬を過ぎたテーマ型の商品の価格は下落し、その後の値上がりが期待できない傾向があるのです。

たとえば「シェール関連株オープン」は、シェールガスという、地中深くにある「頁岩」(けつがん)という層から取れるガスに関わる会社に投資するファンド。2000年代後半から2010年代前半にかけて、シェールガスはエネルギー革命を牽引するとして話題になっていましたが、最近はあまり話題にのぼらなくなってしまいました。

それに合わせるかのように、2014年に約1万2,000円あった同ファンドの基準価額(ファンドの値段)も下落。2021年6月時点ではおよそ8,400円程度となっています。また、ファンドの資産を示す純資産総額も一時約256億円ありましたがどんどん流出し、2021年6月時点で約6億円。こうなると値上がりが期待できないどころか、途中で運用が終わる繰り上げ償還が行われることでしょう。

さらにテーマ型は信託報酬が高いという難点があります。それを忘れて長期間保有していると、損をする可能性が高まってしまいます。

もっとも、テーマ型も「短期(1年〜3年程度)で売買する」と決めて投資するのであれば可能性はあります。その場合、仮に1年〜3年後に値上がりしなくても潔く売却しましょう。

投資信託に限った話ではないのですが、投資をするときには、なぜその商品を買うのか、いつまで投資するのかをはっきりさせることが大切です。理由を自分で説明できないものは買うべきではありません。

すでに買った投資信託についても、そもそもなぜ買ったのか、いつまで投資すると決めて投資したのかを振り返ることが大切です。長期で保有する予定のものを短期で売ったり、短期で売るつもりのものを長期間保有したりしては、いつまで経ってもお金は増えないでしょう。

信託報酬の安い商品に変更した場合はどうする?

インデックス型やバランス型の商品では、信託報酬が引き下げられたり、より安い商品が出てきたりすることがあります。こうした商品に乗り換えた方もいるでしょう。

このとき、積立をやめたファンドでもし利益が出ているなら、売却を検討してもいいでしょう。売却したお金で新たなファンドに投資することで、複利効果を得ることもできます。

しかし、もし利益が出ていないなら、すぐに積立をやめるのではなく、積立金額を減らして続けるのがおすすめ。そうすることで、上で紹介したドルコスト平均法の効果を得られるため、平均購入単価を下げて、プラスに転じさせる可能性が高まります。

こと投資信託に関しては、積み立ててきた資産を値下がりしたからといって売却するのは大きな間違い。売却すると、その後値上がりしても、お金が減ったままになってしまいます。
下がり続ける相場はありません。たとえいま値下がりしていても、少額でも続けておいて、利益が出た時点で売却しましょう。直近ではコロナショックの相場が良い例です。

つみたてNISAで買っている場合はどうする?

つみたてNISAでは、投資した年から20年にわたって、年間40万円までの投資で得られた利益を非課税にできます。投資の利益にかかる税金は本来20.315%。これが非課税にできるとあって、人気です。

しかし、つみたてNISAで非課税投資できる金額(非課税投資枠)は、商品を売っても回復しません。なぜなら、「新規の投資金額」に非課税投資枠が設定されているからです。早期に売ってしまうと、その分非課税で投資できる期間が短くなってしまいます。例えば、2018年に投資した40万円分の資産を3年後に売却した場合、本来使えるはずの残り17年間の非課税期間が使えなくなるので、もったいないということです。

つみたてNISAは、制度上の弱点でもあるのですが、商品を売って新しい商品を買う「スイッチング」に向いていません。

ですから、つみたてNISAで積立する商品を変更した場合は、積み立てしなくなった商品は売らずに持ち続けるか、利益が出ていない場合と同様、積立金額を減らして続けるのがおすすめです。

また、変更する前と後で、同じ指標のインデックス型に投資している場合であれば、変更前の商品は売らずに2つの商品を合わせて、投資金額やリターンを把握するようにしましょう。

なお信託報酬は、ファンドの純資産総額が増えることで引き下げられる場合もあります。

たとえば「eMAXIS Slim」シリーズや「ひふみプラス」などは、目論見書であらかじめファンドの純資産総額に応じた信託報酬率が記載されています。人気の商品の場合、今後も純資産総額が増えることによって、コストダウンも期待できます。

iDeCoや企業型DCで買っている場合はどうする?

iDeCoや企業型DCも、つみたてNISAと同様、運用で得られた利益が非課税にできます。また、iDeCoでは自分で掛金を支払うことで所得税や住民税を安くできます。企業型DCではマッチング拠出(従業員拠出)を行うことで所得税や住民税を安くできます。

iDeCoや企業型DCでは、つみたてNISAと違って商品を入れ替えるスイッチングが制限なくできます。しかも、スイッチング自体には手数料がかかりません(一部の商品で、解約時の手数料がかかる場合があります)。スイッチングできる商品は、iDeCoや企業型DCの金融機関で扱いのあるものに限られますが、それでも、商品を変更したいという人にはありがたい制度でしょう。

ここまで紹介してきた考え方をもとに、利益が出ているならスイッチング、出ていないならば金額を下げて続けるという具合に判断すればいいでしょう。


積立をやめたからといって、それまで積み立ててきた商品を安易に解約するのは考えものです。損失が出ている場合に売ってしまうと、その後値上がりした場合に資産が回復しなくなってしまいます。

また、つみたてNISAだと制度上の問題もあるので特に注意したいところです。お金を減らさずに増やす運用を一緒に実践していきましょう。

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