核禁条約「日本が主導を」 署名・批准に加え 長崎平和宣言

 8月9日の「長崎原爆の日」に開く平和祈念式典で、田上富久長崎市長が読み上げる平和宣言文の起草委員会の最終会合が10日、市内であった。市は日本政府に対し、今年1月発効の核兵器禁止条約に核保有国など各国が参加するよう、主導的な役割を果たすことを求める文案を示した。
 前回会合では、核保有国と非保有国の「橋渡し役」を務めるとして条約に署名・批准していない日本政府に対し、より強く働き掛けるよう求める意見があった。修正案では署名・批准に加え、第1回締約国会議にオブザーバーとして参加し、主導的な役割を果たすよう要望。委員はおおむね了承したが、さらに踏み込んだ発信を求める声もあった。
 朝長万左男・核兵器廃絶地球市民長崎集会実行委員会委員長(78)は「日本政府は『橋渡し役』と言うが行動が伴っていない。より厳しい言葉で伝えた方がいい」。田中重光・長崎原爆被災者協議会会長(80)は「もう一押しの力強さがほしい」と注文。鈴木一郎・長崎日米協会顧問(87)は「被爆都市だからこそ言える言葉の重みを持って世界に訴えてほしい」と述べた。
 文案では昨年に続き、新型コロナウイルス禍にも言及。新型コロナへの対応と同じように、核兵器廃絶の取り組みも一人一人が当事者となることの重要性を訴えかけた。これについて、升本由美子・福祉生活協同組合いきいきコープ常任理事(74)は「考えるだけでなく、行動に移すよう一歩踏み出すことを呼び掛けた方がいい」と要望した。
 終了後、田上市長は「今年は核兵器禁止条約が発効した画期的な年。日本政府には、条約を育てる取り組みに参加してほしい、と平和宣言文でも伝えたい」と述べた。市は意見を踏まえて内容を取りまとめ、今月末にも骨子を発表する。

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