五島 土壇場で逆転勝利 浦兄弟が攻守で存在感 第103回全国高校野球長崎大会 第7日

【2回戦、五島-長崎工】9回逆転勝ちを収め、試合終了後、抱き合って喜ぶ五島の選手たち=県営ビッグNスタジアム

 九回まで何が起こるか分からない競技の魅力を存分に示した。選手14人の五島が土壇場に逆転し、昨夏の独自長崎県大会を含めた3年連続で3回戦へ進出。4月から指揮を執る笠原監督は「“心を鍛えて勝負する野球”を引き継いできた。選手たちの意地が見えた」と劇的勝利を振り返った。
 相手エースの1回戦を分析して直球を狙ったが、予想以上に変化球が来た。球種ではなく高さを絞って攻め直すと、先手を許しながら2度追いつき、再び勝ち越された後の九回も2安打に2四球を選んでドラマを生んだ。守備も小所帯で日々のメニューに限りがある中、ポジショニングを含めて鍛えられていた。
 特に存在感を放ったのは浦兄弟。主将の健史郎は昨季まで捕手として3兄弟の長男、隆紋さんらの球を受けたが、今季から投手を始めて最速135キロのエースに成長した。ベンチの上まで近づいてきた隆紋さんら家族の応援も力に「自分がへばるわけにはいかない」と完投で踏ん張り、打っても決勝犠飛を放った。
 弟の翔馬は1年生ながら七、九回ともに先頭打者で安打を放って同点、逆転を呼び込んだ。小さい頃から一緒に練習してきた仲良し兄弟の末っ子は「意地でも出てやる、健(史郎)を助けたいと思った」と兄に負けじと、はじける笑顔を見せた。
 ただ、選手たちはここで満足していない。13人が福江中出身と気心の知れた仲間で掲げる目標は、過去2年逃した8強入り。健史郎は「日頃からお世話になっている方へプレーで恩返ししたい。チーム全員で勝ちにいく」と次なる闘志を燃やしていた。

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